「ほら、食うんだろ?」
「お、おう!」
エイルから料理が盛られた皿を受け取ると、立ったまま食べはじめる。
それも、廊下での食事。傍から見れば異様な光景であるが、気にする様子はない。
神経が図太いラルフにとって、外見的恥ずかしさより食を優先する。
「そんな所で食うな。食うなら部屋の中にしろ」
エイルはラルフを引っ張ると、部屋の中に押し込み扉を閉める。
一方恥ずかしいという概念が薄いラルフは、黙々と食事を続けていた。
よっぽど味が気に入ったのか、ペロリと一皿目を平らげお代わりを催促する。
「凄いな」
「早食いは得意なのさ」
「健康に悪いぞ」
「ふっ! 俺の胃袋は、鉄でできている」
二皿目を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、ラルフはあることを思い出す。
ポンっと手を叩き少し待っているようにエイルに言うと、寝台の下から荷物が詰められた箱を引っ張り出した。
中身を掻き分け、何かを探し出す。
だが詰められた荷物が思った以上に多く、悪戦苦闘。
中には汚れた服も詰め込まれ、ハッキリ言って汚かった。
ラルフの性格が反映されている箱の中身。
その汚さに、エイルは横を向いてしまう。
そうしなければ、埃を吸い込んでしまう。
「あった! エイル、これだよ」
箱の中から見つけ出された物は、酒瓶だった。
それはかなりの年代物らしく、ラベルに描かれた文字や絵柄が消えていた。
ラルフ曰く「三十年物の果実酒」らしい。
何でも、実家からかっぱらってきたという。
「飲むぞ! これで新年を祝う」
「別に構わないけど、グラスは?」
「確かこの中に」
再び、箱の中を探る。
このような汚い中に口をつける物を入れておくとは、やはりラルフには「清潔」という言葉はないらしい。
予想通り、見つかったグラスは埃塗れで汚かった。
「こんな所に入れておくなよ」
「大丈夫だ。紙に包んである」
確かに薄茶色の紙に包まれているが、それが入れられていた場所が悪すぎた。
エイルは料理が盛られた皿を机の上に置くと、渋々ながらグラスを受け取ることにした。
そして包んでいた紙を剥がすと、ポケットから取り出したハンカチで丁寧にグラスを拭き埃を落とす。


