ロスト・クロニクル~前編~


 それにより進んで名乗り出る者などおらず、当日の運次第。

 楽しいはずのパーティーは、今年最後の運試しでもあった。

(もしかして、これを――)

 その時、エイルはあることを思いつく。

 それは、ラルフは態と会場に来ないのではないのか。

 ラルフの問題児としての立場は、メルダースでは確定済みなので狙われるということは、本人もわかっているはず。

 だから「寒い」と文句を言い、会場に行こうとしなかった。

 普段はのほほんとした一面を見せているが、野生の勘は鋭い。

 それにより、クリスティの登場を予知した。

 これが事実だとしたら、クリスティ同様食えない人物となる。

 いや、食ったら間違いなく腹を壊すだろう。

(今度、突き出してやる)

 それは予想の範囲のことであるが、強ち間違いでもなさそうに思えてくる。

 大小様々な不幸が降り注ぐラルフであるが、命の危機を迎えたことは一度としてない。

 研究の失敗による爆発も、怪我ひとつなく生還するほどだ。

 こうなってくると、ラルフは異なる種族の生き物だと思えてくる。

「本当に、人間なのか」

 ラルフがいる部屋の前まで行くと、エイルはそう叫び扉を蹴る。

 だが、中から返事はない。

 留守という可能性も考えられるが、この寒さで部屋から出ることはまずない。

 だとすると、眠っていることになる。

「おい、起きろ!」

 再度扉を蹴り、部屋の中の住人を叩き起こす。

 すると、中で何かが動いたような気配がした。

 それに続き「ドスン」という何か重い物体が落ちる音が響く。

 そして暫くした後、扉が開かれた。

「何だよ、一体」

「お目覚めかな? ラルフ君」

「おお! 料理を持ってきてくれたんだ。やっぱり、持つべきものは友人だね」

 嬉しさのあまり飛びつこうとするも寸前でかわされ、その勢いで廊下の壁に突っ込む。

 ゴンっと鈍い音がしたが、このぐらいで死ぬことはない。

 エイルは動かなくなったラルフを一瞥するも助けることはせず、部屋に入って行く。

「な、何で助けないんだ」

「生きているじゃないか」

「そ、そうだけど……」

 鋭い突っ込みに、ラルフは反論できない。

 毎回このようなやり取りを繰り返している為、エイルは耐性がついてしまった。

 ラルフが傷つこうが、関係ないことだ。

 それに、エイルの心が痛むということはない。

 現にこのように生きているのだから、同情などしなくていい。