ロスト・クロニクル~前編~


 部屋の隅に逃げ去ったエイルは、再び取り戻された平和なひと時に胸を撫で下ろす。

 毎年のことであったが、クリスティがパーティーに登場すると必ずといっていいほど荒れてしまう。

 それに本人は気にしている様子はなく、それ自体を楽しんでいるのだからいい迷惑だ。

 お陰で、今年も気絶者を出してしまった。

 これもまた毎年の行為で、学年が上に行くほど「慣れ」を有する生徒がいるという。

 逆を言えば、新入生にとっては地獄の光景。強烈な学園長に、まだ震えている生徒もいた。

 いや、震えているのならいい。

 中には、泣いている者もいる。

 ラルフがこの会場にいたら、真っ先に狙われていただろう。

 問題児として有名であり、学園を吹っ飛ばすのが日常の生徒。

 無論、クリスティも目をつけている。

 ラルフはクリスティからの説教を受けたことはないが、気まぐれで行われたら恐ろしい結末が待っていることは間違いない。

(さて、報告ついでに行くか)

 テーブルの上に置かれた「ラルフ専用料理」を持つと、会場から出て行く。

 するとその時、教師の中の誰かが歌っているのだろう音程の外れた歌が聞こえてきた。

 本人は気持ち良く歌っているのだろうが、周囲の反応はいまいちで、会場に響き渡る「止めろ」という言葉。

 だが、歌っている本人は気にする様子はない。

 れどころか、更に歌声が大きくなっていく。

 今年のパーティーは、昨年に続き大荒れ。

 そして、多くの生徒達は気分を悪くしてしまう。

 クリスティは、どうやらトラブルを持ち込む性格のようだ。

 そうでなければ、このようにおかしな方向へと進むことはない。

 本人はそのようなつもりで顔を見せているわけではないが、決まって結果は同じ。

 もしこれが意図的に行われたものであったら、大したものである。

 彼女は「楽しければいい」という性格の持ち主。

 意外に毎年計画をたて、実行している可能性も高い。

 だからこそ隙を見せたら食われ、やられてしまう。

 現に、数人の生徒が気絶した。

 今年最後の大行事。

 そう言われるようになったのは、いつの頃か。

 一年の最後を祝う行事が、いつの間にか我慢比べの罰ゲームとなってしまった。

 しかしそれが何であろうと、多くの生徒達は関係ない。

 用は、飲んだり食べたりできればいいのだ。たとえ其処にクリスティが訪れようとも、数人の犠牲で済むことが多い。

 それは、一種の生贄というべきものか。

 選ばれた人物は冗談ではないが、後から拍手喝采を貰うことができる。

 といって、それ以外の景品が出るわけではない。