「まったく、根性がないわね」
吐き捨てるように言うと、救出に当たっていた生徒を睨みつける。
その凄みのある睨みに、思わず引きずっていた生徒を落としてしまった。
「ゴン」という鈍い音と共に、床に頭が激突する。
だがそのことに気づいていようとも「助ける」という行動を起こすことはなかった。
「貴方達は、メルダースの生徒よ。卒業後はもっと過酷な場所に赴くことになるかもしれないというのに、情けないわね」
本当なら何か反論すべきだろうが、これ以上の過酷な場所が思いつかない為に、誰一人として口を開こうとはしない。
よくよく考えればクリスティの圧力に勝つことができれば、この世の全てのことに立ち向かうことができる。
この地上で、彼女以上の存在はいなかった。
「私なんて、まだ小物よ」
だが、誰も首を縦に振ることはなかった。
そもそも一国の王を跪かせる人物が、小物であるわけがない。
もしそのことを自覚しないで言っているとしたら、かなりの危険人物である。
「さて皆の顔を見たから、仕事をしないと」
決して目線をあわそうとしない生徒達に溜息を漏らすと、燃えるような赤髪を左右に揺らしながらパーティー会場から出て行く。
その姿に多くの生徒が涙を流し、クリスティの退散を喜ぶ。
今までの光景を見守っていた教師達も、同じ反応を見せていた。
たとえ教師であろうと、クリスティに何かを言うことはできない。
彼女はメルダースでは絶対的な存在で、崇めるべき対象だ。
静けさの中に響く足音。その音が徐々に小さくなり、最終的にはクリスティの気配が消え去った。
その瞬間、沈黙が支配していたパーティー会場が騒がしくなり生徒達が食べ物を食べだす。
しかし、後始末はしないといけない。
クリスティの影響で気絶した生徒を、保健室に運ばないといけないからだ。
数人の教師が担架を持ち出しその上に生徒を乗せると、急いで運んでいった。
「さあ、パーティーの続きを楽しみましょう」
一人の教師の言葉により中断していたパーティーが再開されたが、先程までの盛り上がりはない。
いつまたクリスティが登場するのではないかと怯えていたが、酒が入れば関係ない。
鬱憤を晴らすかのように暴れ、食べ物を食べ捲くる。
そこには「気品ある」という言葉は見られなかったが、教師達は何も言わなかった。
短時間の間に相当なストレスを感じ、神経は参っている。
それを癒すには、飲んで食べて暴れるしかない。
そして、嫌な思い出を吹き飛ばす。


