皆、目の前に並べられた料理に視線を奪われていた。
肉や魚。
それに、野菜に穀物類。
または、色とりどりの果物類。
有りと有らゆるモノが使用された料理は、極貧生活を送っている生徒には天国に等しい光景であった。
それにこの日ばかりは無礼講なのか、果物で作られた飲み物の他に酒が用意されていた。
未成年者に……と思われてしまうが、土地によって成人年齢は様々なので、学生であろうと酒を飲む。
いつの間にか、ジグレッドの話が終わっていた。
生徒達が話に集中してくれていなかったことにジグレッドはガックリと肩を落とし、会場の隅に集まっている教師達のもとへと向かう。
哀愁が漂う後ろ姿であったが、料理に集中している者達には関係ないことであった。
食優先の生徒達――毎年行っているパーティーなので予備知識はあるが、やはり聞いてくれないことは悲しいようだ。
急に、周囲が騒がしくなる。
開始の合図も曖昧に、勝手に生徒達がはじめてしまったのだ。
大量に並べたられた料理が、生徒の腹に収まっていく。
中には酒を飲み、暴れる生徒もいた。
そんな生徒達を余所に、黙々と皿の上に料理を盛っているのはエイル。
片っ端からという言葉が似合うように、目に止まった料理を適当につまんでは皿の上に載せる。
これを繰り返すのは、何度目だろう。
そのようなことを思いながらも、単調な作業を止めることはなかった。
(何やっているんだろ)
ひとつの皿がいっぱいになると、別の皿に料理を盛っていく。
無論、これだけの量をエイル一人が食べるわけではない。
パーティー会場に姿を見せないラルフのもとへ持って行くのだ。
何だかんだ言いながら、心の中ではラルフのことが心配。腐れ縁となっている関係、そう簡単に切れるものではない。
そのことを改めてわかったエイルは、三枚目の皿の上に果物を載せる。
(まったく、本当に……)
ラルフに対して、厳しいつもりでいた。
しかしそれは「つもり」であっただけで、本気で行っていたわけではない。
そのことをラルフに話したところで否定するだろうが、現にエイルは優しい一面を有している。
もし優しさを持っていなければ、料理など持っては行かない。
(世話が焼けるよ。しかし、どうしようかな)
大量に料理を載せた皿を、どのようにラルフのもとに運べばいいのか。
一枚ずつ運んで行くことが一番安全な方法であるが、ラルフの為に何度も往復するのも馬鹿らしかった。
といって、良い方法が見つからない。
そもそも、あの者の為に思考を働かせるのが面倒だった。


