ロスト・クロニクル~前編~


 もし知っていてやっているとしたら、本当に尊敬に値する。

 いや、こういう場合は馬鹿と言うべきか。

 それに付き合わされるのがエイルであって、そろそろ我慢の限界が近かった。

「お前の担任に、バラしてやる」

「そ、それだけは……この前実験器具をぶっ飛ばして、怒られたばかりなんだよ。一週間に二度は、流石に……だから、見逃してくれると嬉しいような何と言うか……そういうことなんだ」

「ふーん、あの爆発はお前か」

「えっ! な、何で知っているのかな? ま、まさか! エイルって、ストーカーだったんだ」

「誰が!」

 次の瞬間、エイルの張り手が炸裂する。

 殴られた場所は右頬で、見事に赤い手形が残り乾いた音が響く。

 その音に周囲を歩く生徒の視線が集まるが、音の正体がエイルとラルフのやり取りだと気付くと、特に興味を示すことはなかった。

 それどころか、馬鹿だと失笑されてしまう。

「い、痛いよ」

「お前が、馬鹿なことを言うからだ」

「だ、だって……詳しく知りすぎだから」

「ほう、だからと言って――」

「いや、冗談だよ」

「わかっているならいい。で、あのようなことを行なうのは、お前くらいしかいないだろう」

「そ、其処まで力説しなくても」

「今までこの行動パターンから、弾き出した結果だよ。お前の行動パターンは、実にわかり易い」

「流石、秀才だね」

「お前に言われても、嬉しくない」

「えー、酷いな」

 痛いところを突かれ項垂れているラルフに、エイルは低音の声音で「何故、事件のことを知っているか」を話していく。

 それは、つい三日前の出来事。

 エイルが校庭で魔法の訓練を行っていた時、物凄い音がメルダース中に響き渡った。

 見れば研究棟の窓が割れ、黒い煙が大量に外に流れ出ていた。

 流石にその時はラルフの仕業だと思いもしなかったようだが、よくよく考えればこのようなことを起こすのは、確率的にラルフしかいない。

 結局、エイルの考えが正しいと証明される。それは、ラルフが捕まったと耳にしたからだ。

 そして、長々と説教がされたという。