ロスト・クロニクル~前編~


「残念ながら、それは無理。パーティーに参加したら、色々な生徒と話をする予定だから。お前の面倒など、見ている暇などない」

「いいじゃないか。少しくらい会場から離れたって……エイルは優しいと、俺は信じている」

「僕だって楽しめる時に、楽しんでおきたい。お前だって、昨年はバクバク食っていただろう?」

 昨年は今年と違い暖かい日が続いていたので、寒がりのラルフも過ごしやすかった。

 しかし今年は一変、寒い毎日が続く。

 大量の雪が積もったメルダース。

 ラルフの安住の地はない。

「そうだけど。今年は、寒いから嫌だ」

「冬だから、寒いのは仕方ない」

「俺は、冬は嫌いだ」

 布団に包まり、駄々を捏ねる。

 我儘を突き通せばエイルが折れてくれると思っているのか、やっていることは幼児に近かった。

 しかし彼の本心を見抜いているエイルは、厳しい態度を取り続ける。

 それは、ラルフの言っていることを無視することであった。

 これは意外に効果があるこの方法で、暫くするとラルフの方から謝ってきたがエイルは無視を続ける。

 ここで甘やかしたら、後で付け上がる。

「エ、エイル君?」

 何も喋らなくなったエイルに、ラルフは顔面蒼白。

 それは、怒りが限界に達している証拠であったからだ。

 どうしたら機嫌が直るのかとおろおろとし、やっとひとつの結論を導き出す。

 自分が起きればいい。

 何とも簡単な答えであるが、エイルはこのように起こしにきてくれた。

 つまり、それを実行すれば機嫌が直ると思われる。

 そう思ったラルフは身体を起こすと、寝台の上で正座をする。

「お、起きたよ」

 それでも、答えは返ってこなかった。

 次にどうすればいいかと悩んでいると、エイルが徐に一点を指差す。

 それは、ラルフの頭であった。

 促されるままペタペタと頭を触ると、寝癖の酷さに気付く。

「このままでは、行けないよね」

 急いで寝癖を直すと、他の指摘をされないようにと全身をチェックしていく。

 シワになった制服を調え、埃を叩いていく。

 全てを完璧に整えたラルフは、エイルのチェックを受ける。

 特に、エイルからの指摘はなかった。

 そのことに胸を撫で下ろすと、パーティーに行きたいということを伝えた。

 するとその言葉に機嫌を直したのか、エイルが口を開く。

 だが発せられた言葉は、疑問を問うものであった。