大勢の生徒が楽しむパーティー。
勝手に先に楽しむということは、その他の生徒を敵に回すと等しい。
このパーティーを楽しみにしている生徒は多く、料理の横取りは喧嘩を誘発する。
このことで過去に、生徒間で揉め事が起こった。
「先につまみ食いをした」という些細な理由であったが、食が絡むと人は変わることが多い。
特に、パーティーで出される料理は絶品。
あの件以来、パーティーがはじまるまで立ち入りが禁止となってしまった。
しかしエイルが見た生徒のように、頑張って潜り込もうとする生徒が後を絶たないのは現実。
やはり、美味しい料理を食べたいのだろう。
そんな生徒達に肩を竦めると、エイルは真っ直ぐ寮に向かう。
ラルフが使用している部屋に、エイルはノックなしで立ち入る。
それに対しての抗議は、特になかった。
どうやら夜の寒さによって動けないらしいが、これはこれで静かで良かった。
「はじまるぞ」
「寒い」
「それは、何度も聞いている」
「料理は、食いたい」
「うん。その気持ちは、わかるよ」
「それなら……」
交わされる会話は短いものであったが、ラルフは一向に寝台から起き上がろうとはしない。
その時、廊下が騒がしくなってくる。
どうやらパーティーの時間が、近付いているようだ。
「迎えに来たけど、僕は行くよ」
「い、嫌だ!」
「なら、起きる。寒いのが苦手なのはわかっているけど、この場所にいたら料理は食えないぞ。持ってくるというのは却下」
言おうとしていたことを先に言われてしまい、ラルフは悔しそうな表情を浮かべていた。
いくら相手が友人とはいえ、エイルにしてみればそこまでしてやる理由も義理もない。
だがラルフは友人からの恩を受けたいらしく、布団の中から利き手を出すとひらひらと動かす。
「何だ、この手は?」
「持ってきてほしいという合図」
我儘な態度にエイルは切れそうになってしまうが、懸命に堪えることにした。
一発拳をお見舞いしてやることも可能であったが、この攻撃でますます記憶が飛ぶようなことになってしまったら、これはこれで問題になってしまうので、エイルはストレスを体内に溜め込む。


