ロスト・クロニクル~前編~


 大勢の生徒が楽しむパーティー。

 勝手に先に楽しむということは、その他の生徒を敵に回すと等しい。

 このパーティーを楽しみにしている生徒は多く、料理の横取りは喧嘩を誘発する。

 このことで過去に、生徒間で揉め事が起こった。

 「先につまみ食いをした」という些細な理由であったが、食が絡むと人は変わることが多い。

 特に、パーティーで出される料理は絶品。

 あの件以来、パーティーがはじまるまで立ち入りが禁止となってしまった。

 しかしエイルが見た生徒のように、頑張って潜り込もうとする生徒が後を絶たないのは現実。

 やはり、美味しい料理を食べたいのだろう。

 そんな生徒達に肩を竦めると、エイルは真っ直ぐ寮に向かう。

 ラルフが使用している部屋に、エイルはノックなしで立ち入る。

 それに対しての抗議は、特になかった。

 どうやら夜の寒さによって動けないらしいが、これはこれで静かで良かった。

「はじまるぞ」

「寒い」

「それは、何度も聞いている」

「料理は、食いたい」

「うん。その気持ちは、わかるよ」

「それなら……」

 交わされる会話は短いものであったが、ラルフは一向に寝台から起き上がろうとはしない。

 その時、廊下が騒がしくなってくる。

 どうやらパーティーの時間が、近付いているようだ。

「迎えに来たけど、僕は行くよ」

「い、嫌だ!」

「なら、起きる。寒いのが苦手なのはわかっているけど、この場所にいたら料理は食えないぞ。持ってくるというのは却下」

 言おうとしていたことを先に言われてしまい、ラルフは悔しそうな表情を浮かべていた。

 いくら相手が友人とはいえ、エイルにしてみればそこまでしてやる理由も義理もない。

 だがラルフは友人からの恩を受けたいらしく、布団の中から利き手を出すとひらひらと動かす。

「何だ、この手は?」

「持ってきてほしいという合図」

 我儘な態度にエイルは切れそうになってしまうが、懸命に堪えることにした。

 一発拳をお見舞いしてやることも可能であったが、この攻撃でますます記憶が飛ぶようなことになってしまったら、これはこれで問題になってしまうので、エイルはストレスを体内に溜め込む。