しかしラルフ相手に「謝る」ということはできない。
彼に謝るということは、何かを失う感じがしてしまう。
あれは転んだ衝撃だと思いたいが、考えれば考えるほど自分が悪いのではないかと思えてくる。
「……様子を見に行くか」
乗り気ではなかったが、行かないわけにもいかない。
本当に変死でもされていたら学園はじまっての一大事に発展し、両親から何を言われるかわかったものではない。
それに「帰って来い」が、更に酷くなってしまう。
ラルフという存在に迷惑しているが、学園生活には何ら問題はない。
過ごしやすく、有意義な毎日を送っている。
それを失うようなことがあれば、真っ先にラルフを恨んでしまう。
「このまま、本当に……」
影でラルフを抹殺し、静かな場所に埋めてしまう。
もしこれが可能であったら、エイルは本気で行っていただろう。
これにより殺人罪に問われることになってしまうが、その方が学園の未来は明るい。
彼の行動は大勢に迷惑を掛けているので、誰からも文句を言われない。
だが、ラルフは簡単に死ぬタイプではない。
殺し埋めたところで復活を果し、学園に舞い戻ってくるだろう。
生命力に関しては、他の人間を凌駕している。
以前、エイルのことを「人間の腹から――」と言っていたが、ラルフの方が人間の腹から生まれてきたのか怪しい。
人間を超越した新人類――そのように結論付けなければ、ラルフという変わった人物を説明できなかった。
「どっちがだよ」
溜まりに溜まった感情を吐き出すと、エイルは図書室を後にした。
図書室から出た瞬間、周囲に漂う冷たい空気に身体が反応を示す。
図書室という閉鎖した空間とは違い廊下は外へ繋がっているので、寒さが一気に押し寄せエイルの体温を奪っていく。
「この寒さだと、まだ自室だな」
予想していた以上の寒さにエイルは両手をポケットの中に仕舞うと、小走りで寮に向かった。
その途中、幾人かの生徒に出会う。
どうやら開始時間が待てず、食堂に潜り込む様子だ。
それは毎年のように行われることであって、相手も警戒していた。
見付かれば即追い出され更に厳重な警備体制となってしまい、潜り込むのは不可能に近い。
ここまで厳重にする理由、それは「横取り禁止」という考えと「料理に埃がかかる」という理由があったかだ。


