「今のは、冗談。冗談だって」
「冗談で、人に食虫植物をあげるか。お前が育てる動物や植物は、常識を逸脱している。それと、僕は手伝わない。食虫植物であっても、育てはじめたなら最後まで責任を持て。まったく、いい加減にしてくれないか。毎回、僕の世話になるなよ。自分で片付けられることは、自分でしろ」
「いいじゃないか! どうせ、暇なんだろ。暇なら、手伝ってくれ。これも、勉強になるぞ」
「お前の手伝いをするほど、僕は暇じゃないんだよね。こっちだって、都合というものがあるんだし。それにどうして僕が、マルガリータ二号もどきの世話をしないといけないのかな」
その台詞に、ラルフの身体がピクっと反応を見せた。
どうやらキャシーをマルガリータのように、逞しく成長させる気でいたらしい。
それが判明した瞬間、エイルは舌打ちをしてしまう。
まさか、予想が的中するとは――
ラルフの考え方は、数通りしかないようだ。
マルガリータが枯れたら、新しい植物を育てる。
何ともわかりやすいパターンに、エイルは何も言えなくなってしまう。
そして今回も、可愛らしい名前であった。
「な、なんだよ!」
「けったいな植物を育てやがって」
「なに、そのけったいって」
「知らないというのなら、それでいい。気になるのなら、後で調べるといいよ。ねえ、ラルフ君」
次の瞬間、ラルフは無言で頷いていた。
そう食虫植物のキャシーを見た時から、エイルは黒く染まりかけていたのだ。
黒く染まった後に待っているもの、それはラルフに対してのおしおきだ。
無論、これに関しての学習能力はある。
しかし、実験の手伝いをしてほしいと思うのは正直なところ。
あの実験は一人でやるのが大変なので、ラルフは意を決すると恐る恐る尋ねる。
「エイルは、全てに愛を与えないのか? 全てに愛を与えることは、大切だよ。平和に繋がるし」
「愛は、あると思うよ」
「なら、俺も愛して」
ラルフはキャシーを床に置くと、両手を大きく広げる。
そして感動の再開とばかりに抱きつこうとするが、エイルはそれを許さなかった。
素早い動きで横に逃げると、片足をラルフの前に出す。
誰でもわかる罠だというのに、ラルフは見事にそれに躓き床に顔面直撃してしまう。


