手紙を書き終えると、エイルは自室から一階へ向かう。
手紙は寮の管理人に手渡せば、後でまとめて出してくれるからだ。
いつものように手紙を手渡すと、エイルは夜までどのように時間を潰そうか考える。
これといって、何かを行う予定はない。
日頃の復習というのもひとつの考えだが、今日はその気が起きない。
それなら時間が来るまで遊びの時間にすればいいが、エイルは遊び方を知らない。
真面目に勉強をしている所為か、羽目の外し方がわからないのだ。
そうなると、図書室で静かに読書というのが一番いいだろう。
やはり知識を得られる時に、多くのことを学ばないといけない。
いつもと同じ。
そう思うと、笑みが漏れてしまう。
不真面目という言葉が似合わないエイルは、やはり生活面も真面目になってしまう。
エイルは大きく伸びをすると、図書室に向かうことにする。
その時、ドタドタという足音が此方に近付いてくる。
騒がしい音に、エイルはある人物の名前を思い浮かべる。
そう、このようなことをする人物はただ一人で、ラルフに決まっている。
音の主は予想通りの人物で、何やら小降りの鉢植えを抱きかかえ右往左往している。
ふと、ラルフと目が合う。
一瞬「会いたくない友人に会った」と後悔するが、それは遅かった。
エイルの存在を知ったラルフは、真っ直ぐに此方に向かってくる。
それも、気持ち悪い笑みを浮かべながら。
「エイル聞いてくれよ」
「何だよ、一体」
「キャシーちゃんの具合が悪いんだ」
「キャシーちゃん?」
「これだよ」
キャシーとつけられた植物の正体は、ハエなど昆虫を主食とする食虫植物。
ラルフが抱えている植木鉢にはその子供と思われる植物が植えられており、小さいながらも食虫植物としての風貌が感じられた。
「い、いつの間に……」
「マルガリータちゃんの代わりに、心の隙間を埋めてもらっているんだ。マルガリータちゃんの方が、可愛いけど」
「そ、そうなんだ」
植物を育てることに目覚めたことはいいが、まさか山百合の次が食虫植物とは思いもしなかった。
選択肢を間違えているとしか言いようのない植物に、エイルはただ項垂れるしかない。
これもまた、ラルフのおかしな美的感覚が影響しているのだろう。
やはり、凡人には理解し難かった。


