「おはよう。ラルフ」

「な、何? こ、こんな朝に」

 予想通り、ラルフは布団に包まり寒さに震えていた。

 その姿にエイルは瞳を怪しく光らせると、おもいっきり掛布団を両手で掴むと一気に剥がす。

 いきなりの行動にラルフは悲鳴を上げるも、外気の冷たさに一瞬にして身体が固まる。

 そして、一瞬にして反論の意欲を失う。

「さ、寒い」

「確かに、今日は寒いね」

 剥ぎ取った掛布団を床に落とすと、寒さによって固まっているラルフに視線を落とした。

 全身の血行が悪いのか、肌がやけに白い。

 それに唇は紫色に染まり、カチカチと歯を鳴らしていた。

 流石にこの状況では危ないと判断したエイルは、乱暴に掛布団をラルフの上に落とす。

 掛布団が返されたと同時にラルフはそれを鷲掴みにすると、自分の身体にぐるりと巻きつける。

 一本の長い棒状と化したラルフ。ピクピクと微かに動く姿が、何とも異様な光景である。

 エイルが掛布団を剥がした所為で熱気が奪われたらしく、掛布団は冷たくなってしまった。

 身体の熱で冷たくなった掛布団を必死に温め、元の温もりを求める。

 そんな姿にエイルは寝台に腰掛けると、掛布団の端っこから飛び出した血行の悪そうな足の指に視線を向ける。

「てい!」

 何の前触れもなく、いきなりラルフの足の指を叩くエイル。

 彼曰く「殴ってほしいと訴えていた」らしい。

 唐突な行為にラルフは抗議の声を上げるも、棒状に包まっている為に身体が左右に動くだけ。

「お前は魚か」

 その姿は、陸に上げられ苦しんでいる魚の姿に似ていた。

 更に腰を中心に、上半身と下半身を逆方向に曲げていく。

 人によっては運動しているように見えなくもないが、ラルフが行うとみっともない。

「殴るな!」

「殴られたくなければ、起きればいいじゃないか。お前は、そんな簡単なこともわからないのか」

「嫌だ! 寒い。夜まで布団の中にいる」

「夜になれば、もっと寒くなるぞ」

 その言葉に、ラルフの動きが止まる。

 日中は太陽のお陰で、雪があっても多少は暖かい。

 しかし夜になれば一気に気温が下がり、場所によっては雪が氷へと変化してしまう。

 そうなれば、ますます起きるのが辛くなってしまうだろう。

 それを考えれば、今起きた方が何倍もいい。