「このことを伝えるの?」
「勿論です! 研究会の真の意味を知りましたので。多分、研究会は解散となる可能性がありますね」
「是非、そうしてほしいな。研究会の面々のストーカー行為は、半端じゃないから。あれは精神に病を発症させる」
「了解しました」
「あっ! それと、ラルフ・マルガリータじゃないから。何だか、混同をしているみたいだけど」
「知っていますよ。ですので、態とです」
爽やかな笑みを浮かべつつそのように答える新人君に、エイルは「空恐ろしい」という言葉が浮かんできた。
それが態とであったとしても、瞬時に言葉を生み出す能力は侮れない。
「ひとつ聞いていいかな? 何で、マルガリータのことを知っていたんだ。あれは、一部の人間しか知らないはずだけど」
「有名ですよ。研究会の生徒の間では、伝説になっていますし。山百合がどどめ色に変化したことは」
それを聞いて、エイルは納得できた。
ラルフは研究会を離れたといっても、総帥にはかわりない。
無論、総帥のやっていることは研究会に筒抜け。
それにより山百合にマルガリータと名付け、どどめ色の山百合に進化させたことも知っている。
しかし、事は思ったより進んでいるようだ。
ラルフが山百合を育てている。
ここまではいいとして、問題は勝手に進化させたということだ。
「それって、研究会の中だけの話かな?」
「はい。外部の人間は、知らないはずです」
「それなら、いいけど」
その言葉に、エイルは胸を撫で下ろす。
どどめ色に変化した山百合などを女子生徒が見たら、間違いなく悲鳴を上げる。
そして、処分の対象に。
処分――その単語に、エイルは先程まで自分が手伝っていた薬の使い道を思い出す。
(これも処分だろうな)
その薬は、マルガリータの栄養剤だった。
エイルが寮の窓から投げ落としても枯れることのなかった、不死身のマルガリータ。
流石育て主に似て、タフな一面を見せエイルに迷惑を掛ける。
マルガリータを抱き締め涙ぐむラルフのことが少しだけ哀れに思ったエイルは、栄養剤を作るのを手伝った。
だが、その考えを訂正することになろうとは、思いもしなかった。
やはり、ラルフに哀れみを持ってはいけない。
持ったところで、痛いしっぺ返しに遭うだけである。


