ロスト・クロニクル~前編~


「エ、エイルは、どうしてその技を……ぐえ!」

「父から教わった。魔導師たる者、体術ぐらい使えないでどうするってね。お陰で、ラルフ相手に技をかけられる。うりゃ!」

 その瞬間、何か鈍い音が聞こえた。

 どうやら、何処かが折れたようだ。

 その音を聞いたエイルはラルフに対しての関節技を止めると、立ち上がり白目をむいたラルフに視線を落とす。

「そういえば、君は研究会の生徒だよね」

「少し前まではそうでした」

「少し?」

「やめました。だって総帥がこのような人とは、思いもしませんから。何だか、幻滅しました」

「そ、そうなんだ」

「いけませんか?」

 笑いながら話す新人君に、エイルは違う意味で恐ろしさを覚えた。

 見切りが早いというべきか、敵に回したら危ないタイプである。

 すると、白目をむいていたラルフが復活を遂げる。

 人間とは思えない回復スピードに、エイルは再び容赦ない関節技の数々を披露していく。

「少しは、寝ていろ」

「だ、だって! 聞き捨てならぬ会話が」

「お前が、総帥だからいけないんだって」

「ち、違う。俺は、健全な気持ちで……」

「何が健全だ」

「ぎゃあああ!」

 エイルの手によって海老反りになっているラルフは、思いっきり床を叩き開放してほしいと訴える。

 しかし、エイルはやめようとはしない。

 寧ろ楽しそうに、力を込めていくのだった。

「じゃあ、聞いてみよう。君が研究会をやめた理由は? この馬鹿の為に、簡単に説明をしてくれるかな」

「はい。魔導師に勝つのは無理だと思いましたから。現に、総帥はエイルさんに負けていますし」

「だってさ」

 そう言うと、一気に力を込めた。

 次の瞬間、暴れていたラルフの動きが止まった。

 どうやら、二回目の昇天を果したようだ。

今度は白目ではなく、口が半開き。

 多分、そこから魂が抜けているだろう。

 こうなれば、少しは静かになる。

 いや、ならないといけない。

 ラルフが口を開いたら、何かと煩いからだ。