しかしその勢力は巨大で、近隣諸国の間ではそのことを危険視する動きや意見が続出しているという。
大国以上の財力を持ち、歴史を左右するほどの地位を確立する。
この場合、危険視というよりただの
嫉妬と取るべきだろう。周囲からの風当たりは、相変わらず厳しい。
だがこの学園の卒業者は能力・技術力に富み、個々の主要な部署に点在するなど能力を買われることが多いのも事実。
敵も多いが、味方も多いということだ。
学園を批判する声が多いと同時に、その存在価値を評価する声も多い。
それにより入学希望者は年々増え、規模を巨大化させていく。
この学園で学ぶ生徒の数は――
それを正確に知っている生徒は、残念ながらいない。
それだけ人数が多く、また出入りも激しいことで有名である。
全員の名前を性格に覚えるのも大変だが、希望と現実が一致することは珍しい。
多くの生徒は行われる高度な授業について行けず、学園を去ってしまう。
入学試験以上に厳しいのが、進級試験。
更にその上にいくのが、卒業試験。
甘い考えで入学した者は必ず挫折を味わい、立ち直れない者は学園では不要。
実力がモノを言い、厳しいがそれが現実といえる。
エイルの周囲を歩いている者達はメルダースという名に憧れ、それに恥じないように努力をしているが、中にはそれに不似合いな人物も必ず存在する。
真面目――それは、限られたごく一部の人間にしか用いられない言葉だろう。
現に、不真面目な相手をエイルは知っていた。
その人物が先程から、エイルの名前を何度も呼んでいる。
その声に顔を顰めると、無視を決め込む。
それでも相手は、諦めることなく更に大声でエイルの名前を呼んでくる。
しまいには肩を掴み、振り向かせようとしてきた。
無論、エイルは不機嫌な表情を作る。
そして、大声を発した。
「煩い!」
「酷いな、エイル君」
「ムカつく」
「相変わらず、きっつい言葉」
「誰のせいだ」
彼の目の前に立っていたのは「自称、エイルの親友」のラルフ。
今まで何を行っていのかわからないが、後方で纏めている黒髪はボサボサに乱れ制服はヨレヨレ。
普段から小汚い格好をしているラルフが更に汚い。
いや、今の姿は不潔そのもの。
それでも悪臭が漂わないということはそれなりに清潔なのだろうが、その姿は年上には見えない。
だがそれは一歳違いなので、性格面を考えれば同年代。
入学はエイルと同じ十二歳で、一度だけ留年しているようだが、もし普通に進級をしていれば出会うことなどなかった。


