「……悪かった」
「うん。素直でよろしい」
その瞬間、ラルフは項垂れそのまま床に崩れ落ちてしまう。
この姿こそ、エイルとラルフの力関係を表す構図であろう。
どす黒いオーラを放ち上から見下す姿のエイルに、半泣き寸前のラルフ。
決定的な力の差を見せ付けられた新人君は、エイルを崇めようと思いはじめた。
ラルフが、小刻みに震えていた。
そう、笑っているのだ。
その異様な光景にエイルは息を呑むと、しゃがみ込みラルフの表情を確かめる。
するとちょっぴり涙ぐみながら、含み笑いを漏らしていた。
「ラ、ラルフ」
刹那、ラルフがガバっと顔を上げる。
そして満面の笑みを浮かべながらエイルの表情を見ると、宣戦布告とも取れる言葉を発した。
「そうだよ。魔導師は、力が弱い。それなら、接近戦に持ち込めば勝てる。だから、勝負だ」
「ほう、ラルフは体力に自信があるんだ」
「勿論! 日頃から、重い実験用具を運んでいるからね。お陰で、腕の筋肉はこんなに凄いんだ」
そう言うと立ち上がり、おかしなポーズを取る。
これでも一応構えのスタイルらしいが、どう見てもへっぴり腰。
最初から負けは決定していたが、受けた喧嘩は買う――それがエイルの考え。
それに相手はラルフ、手加減する必要はない。
それ以前に、徹底的に痛めつけたかった。
「行くよ、エイル!」
「いいよ。面白いじゃないか」
前髪を掻き揚げると、立ち上がりラルフからの攻撃を待つ。構えは特に行わなかった。
ラルフの力量など、はじめからわかっていたからだ。
そして勝負は、一瞬のうちに決まった。
「はひ!」
思いっきり飛び掛ろうとしたものの、エイルは素早い動きでラルフの胸倉を掴むとそのまま投げ飛ばす。
可哀想なことに、ラルフ背中を床に強打。
その痛みに息ができなくなり空気を求め喘ぐも、エイルの容赦ない攻撃は続く。
「全員が、弱いと思ったら大間違いだ!」
「ぎゃあ!」
半分グロッキー状態のラルフに、エイルは複雑な関節技をかけていく。
弱いどころか最強という名がついてもいいエイルの攻撃に、ラルフは昇天寸前だった。
だが売られた喧嘩の代償は、きっちりと払ってもらわなければならない。
そうしなければ、ストレスが溜まってしまう。


