ロスト・クロニクル~前編~


「お、重い」

「わっ! ご、御免」

 慌ててエイルの上から退くと、満面の笑みを浮かべ大きく膨らんだ皮袋を取り出す。

 上下に振るたびに聞こえるのは、硬い何かがぶつかる音。

 どうやら、かなりの金額をピン撥ねしたようだ。

「これだけ?」

「うん。これだけ」

 皮袋を開き数枚の銀貨を取り出すと、地面に一枚一枚並べていく。

 並べられたのは、五枚の銀貨。

 エイルは暫くその銀貨を眺めていると、ポツリと呟く。

 その言葉に、相手の表情が変わった。

「そ、そんなことないさ」

「そうなんだ」

「し、信じてないね」

 エイルもまた満面の笑みを浮かべると、いきなり身体検査をはじめる。

 首元からはじまり胸に両腹。

 すると、何か硬いものを発見する。

 エイルはその場所を思いっきり叩くと、皮袋の中身と同じ音がした。

「この音は何かな?」

「ああ、隠せないか」

「素直に隠した分も出そうね」

「……わかったよ」

「そう、素直が一番」

 その言葉に、渋々ながら懐から取り出す。

 その皮袋は先程のよりは小さいが、かなりの量が詰まっている。

 相手はその中から更に銀貨五枚を取り出すと、地面に丁寧に並べていく。

 彼の素直な行動に、エイルは拍手を送る。

 しかし相手は不機嫌そのもので、全てをピン撥ねするつもりだったようだ。

「せっかく稼いだのに」

「配当は、きちんとやらないと。学生だからって甘いのは許されない。それに金欠だから、金には煩いよ」

「敵わないな」

「そんなことはないよ。僕は、無害な人に喧嘩を売ったりはしないし。ただし、買った喧嘩は倍返し」

「うっ! 厳しい言葉」

 爽やかな笑顔で脅しに入るエイルに、相手は改めて敵に回してはいけない人物だと学ぶ。

 もし敵に回した場合、どのような結末が待っているというのか――

 それは、魔導研究会の面々が身を持って教えてくれている。

 ふと、ピン撥ねをしようとしていた生徒が、研究会のメンバー少ないことに気付く。