ロスト・クロニクル~前編~


 二人は慌ててペンを動かし、黒板に書かれている内容を懸命にノートに写していく。

 その姿にセリアは満足したのか、二人から視線を外すと一定の声音で魔法理論に付いて語りだした。

「厳しいな」

「そうだね」

「優しい先生がいいよ」

「僕もそう思う」

 二人が同時に溜息を付くと、再びセリアの視線が此方を向く。

 刹那、身体が震える。

 恐怖と隣り合わせの授業は、生きた心地がしない。

 そして十分後、授業の終了を告げる鐘が鳴り響いた。

 開放された。

 二人の表情は清々しいものがあったが、開放は地獄へのはじまりでもある。

 授業中に違う教科書を読んでいたことをセリアは知っており、授業の終了と同時に呼び出しが待っていたのだ。

「エ、エイル!」

「頑張れよ」

「い、嫌だ!」

 泣こうが喚こうが、セリアには関係ない。

 彼女は「授業を真面目に受けなかった不届き者」として、この生徒を連れて行くのだから。

 誰も庇う者はいない。ただ連れて行かれる生徒に視線を向けながら「馬鹿だ」と、心の中で思う。

 そして、無事の帰還を願うしかない。

 エイルも同じような感情を持っていたが、それを口に出すことはしない。

 こうなることを予知し彼に注意を促したが、聞いていない本人が悪い。

 エイルはクスッ笑うと、次の時間の過ごし方を考えていく。

(自習か……)

 担当する教師は只今出張中なので、個々で勉強を行えとなっている。

 ふと、手元のレポートに視線を移す。

 自習となれば好きなことが行えるが、無論外出はしてはいけない。

 それなら図書室でレポートを仕上げるのに時間を使えばいいと、エイルはレポートを読みつつ、図書室へ急いだ。


◇◆◇◆◇◆


 流石、数百人の生徒が共に学ぶ場所というべきか。

 教室から廊下に出た途端、多くの生徒が視界の中に飛び込んでくる。

 その光景にエイルは、この学び舎が掲げる「〈魔法文明の保存と継承〉という理念を掲げている学園」という概念を持つ学園の存在意義を思い出す。