「会長、死なないで下さい」
「大丈夫です。我々の研究の成果を見せ付けましょう。これで勝てば、名前が知れ渡ります」
「ご、ご無事を――」
だが、その行為が逆に自分達の身を危うくした。
何と冷たい風が、逃げ去る研究会の生徒を包み込んだ。
次の瞬間、纏っていた制服が一瞬にして凍りついてしまう。
続いて霜が降りたかのように、全身が白く染まっていく。
流石に氷像にはならなかったが、あまりの冷たさに次々と倒れていく。
「ああ、同士よ」
しかし、会長には他人を心配している余裕などない。
エイルが使用した魔法は確実に会長を狙って使用されたもので、他人を心配するより我が身を心配することを優先しなければならない。
その時、描かれた魔方陣の力が発動し魔法を反射させる。
ピシっと何かを弾くような音が響き、魔方陣の外周を滑るように力が流れていくのが目視できた。
頭を抱え震えていた会長は魔法の防御が上手くいったことに両手を上げて喜ぶが、その喜びも長くは続かなかった。
何と魔方陣の力で生み出された守りの部分が、徐々に凍結をはじめていく。
無論、中にいる会長は寒くて堪らない。
といって、中から氷を溶かすことは不可能。
魔導研究会――その中に魔法を使用できる生徒は一人もおらず、もしいたとしてもエイルの魔法によって凍り付いている。
「さ、寒い!」
だが、分厚い氷に阻まれ外に声が届かない。会長は両手で身体を抱きしめると、しゃがみ込み救出を待つ。
「威力がありすぎた……か」
吹き荒れる風が治まると同時に、エイルが呟いた言葉がこれだった。
辺り一面、氷に閉ざされてしまう。
青々とした草木は凍り付き、一部では氷柱が生み出されていた。
その光景を腰に手を当て、エイルは見物する。
その姿は、実験結果を眺める研究者のようであった。
その力は観客の一部にも被害が及び、何人かが担架で運ばれていく様子が目に入る。
あまりの惨状に、珍しくエイルは動揺を隠せない。
彼は人差し指で頭を掻くと、ジグレッドの怒りの表情が脳裏を過ぎった。
(……怒られるな)
いくら学園長の許可があったとはいえ、ここまで被害を拡大させてしまったからには言い訳はできない。
説教という言葉に、エイルは肩を落としてしまう。
すると、静まり返っていた観客が急に騒ぎ出す。
どうやら決着がついたことを確認し、盛り上がっているようだ。


