「な、何だと!」
「ど、どうしますか?」
「中止に決まっているだろう」
次の瞬間、見物をしていた生徒達から抗議の声が上がった。
野次と怒号、そして沢山の物が飛ぶ。
流石に金銭が絡んでいる決闘、勝負がつく前に中止となったら大損害である。
賭け事を取り締まっていた生徒はペンと手帳を取り出すと、急いで損害分の計算をはじめた。
「中止なら、僕は帰るよ」
「いやー、今回は……御免なさい」
「何かあったの?」
「諸事情だよ」
「諸事情?」
「いや、ちょっとした手違いかな」
笑いながらそのように答えるも、額からは怪しい汗が流れ落ちていた。
どうやら「準備不足」そんなところだろう。
先程まで気付かなかったが、大勢の生徒が校庭に何かを描いていた。
エイルは無言のまま描き途中の“それ”を見に行く。
意外に大きいそれは、魔法陣であった。
魔導研究会という名前の通りそれなりに魔法の研究は行っているようだが、いかんせん形が悪い。
「歪だね」
「素人が描いたものだから、仕方がないさ。本当なら、もっと綺麗に描く予定だったけどね」
描かれている文字や図形をひとつずつ確認していくと、形が歪なだけでかなり高度なものと判明する。
魔法防御を主体とした描き方――どうやらこれで、勝負を挑むようであった。
「で、次はいつにする?」
「また、勝負をしてくれるのか!」
「やってほしいだろ?」
痛い部分を突かれ、研究会の面々に沈黙が走る。
刹那、全員の顔が一気に輝きを放つ。
その異様な光景にエイルは戦く。
いや、エイルだけではない。
大勢の生徒が同じ反応を見せた。
「も、勿論です」
どうやらエイルから「二度とやりたくない」と言われたら、泣いて頼もうとしたようだ。
そんな恥ずかしい行為を行わないで済んだことに、全員が嬉しがる。
するとエイルはコホンと咳払いをすると、どうやら協力する気なのだろう魔方陣のおかしな部分を説明していく。


