外見年齢は二十代前半であるが、中身は数百年を軽く生きている老婆。
老婆――この言葉を学園長の目の前で言った生徒は、地獄を味わうと実しやかに語られる。
一説には魔法研究の失敗による後遺症によるものらしいが、学園長は詳細を語ることはしないので真実は藪の中。
老いを失った身体というのは女性にとって憧れであると思われるが、彼女に言わせればそうではないようだ。
自分より先に死んでいく者達を見るのが悲しい。
そして、自分はいつ死ぬことができるのか――
数百年生きているとしたら、数え切れないほどの死に立ち会ったに違いない。
中には、メルダースの生徒も含まれている。
入学当時は幼く可愛いと思っていた生徒であるが、死を迎えた時は自分より老いている。
何と辛いことか。
口には出さないが、多くの者が学園長の痛みを理解しようと努力している。
「理解している」と言葉で言うのは簡単だが、その人物ではない。
無論、体験もしていないのだから「理解」というのは不適当だ。
その為、メルダースの生徒は決して学園長を特別扱いで見ることはしない。
だから学園長の気まぐれや性格に付き合い、面白おかしくやっている。
だた、一部の問題児には手厳しい。
「学園長は見に来ることは……」
「大丈夫だって。お前も心配性だな」
「学園長は、仕事が忙しいみたい」
「それなら安心した」
「あっ! はじまるみたい。頑張ってね」
青空に、金管楽器の音色が響く。
その音に身体を震わせ反応したエイルは、何処で鳴らしているのか探す。
音の発生源はすぐに見つかった。
そう、大勢の生徒が天に向け吹いていたのだ。
「何、あれ」
「演出だよ。こういうのは、派手にやらないと。あの研究会との決闘は、お祭りに等しいから」
「それも、学園長の指示?」
「そんなところだね」
「本当に、派手なことが好きだね」
「それにより、皆が楽しんでいるさ」
対戦――もとい決闘がはじまる前から、脱力感に襲われてしまう。
このような演出があると知っていれば、エイルは断っていた。
決闘というものは緊張感の中で行われるものであるが、これは予想外。
そして決闘というのは、名ばかり。
そもそも「お祭り」と呼ばれている時点で、別のモノとなっている。


