ロスト・クロニクル~前編~


「嘆くな! 勝てばいいんだ」

「勝てば……ですね」

「よし! 今までの研究成果を見せる時だぞ。皆の者、やるだけのことはやり、奇跡を信じよう」

「お、おう!」

 気合十分の魔導研究会であったが、ひとつだけ誤算があった。

 それは魔導研究会の面々は研究者の集まりなので、力を用いる人物がいない。

 今まで負けてきた原因が此処にあるとは、誰も気付いていなかった。

「バゼラード君。頑張ってね」

「なに、その表情は?」

「私達も、バゼラード君に賭けているのよ」

「そうそう。昼飯まで賭けているんだ。だから、負けられると大損なんだ。絶対に、勝ってくれよ」

「いつの間に、そんなことを」

「いいじゃない。お祭りだしね」

 魔導研究会との対戦は学園の間で人気というのは知っていたが、今までエイルは興味がなかったのでこの対戦を一度も見ていない。

 だが、今回対戦相手になってはじめてわかったことは、このお祭り騒ぎ。

 しかし、賭け事を黙認している教師達も凄い。

 生徒間の賭け事は校則で原則禁止されているが、今回だけは特別なのだろう。

 そう思わなければ、メルダースという名前を疑ってしまう。

「エイルが勝ったら、配当金の一部をあげるからさ。だから、絶対に負けるな。徹底的にやっつけろ」

「何だよ、その大金は……」

 賭け事の受付が終了したのか、笊に大量の銅貨や銀貨を入れた生徒がやってくる。

 短時間でこれだけの金が集まるということは、それだけこの対決に熱い視線が注がれているということになる。

「見ろ見ろ、金貨だぞ! おお! 眩しい。こんな大金を手にするなんて滅多にないから、手が震えるよ」

 笊の中から綺麗に磨かれた金貨を取り出すと、エイルの目の前に突き出す。

 一般の生徒が金貨など出せるはずがない。

 そう考えると、これを出したのは教師か。

 それとも、一部の金持ちの生徒か。

 前者だとしたら、ジグレッドはいい顔をしない。

 だが、決闘が行われるということは、ジグレッドが許可したことになっている。

 もしかしたら、教師の賭け事も黙認しているのか。

 エイルが腕を組み考え事をしていると、笊を持っていた生徒が今回の件について詳しく話はじめる。