ロスト・クロニクル~前編~


「なら、準備をしないと」

「そうそう、許可も取らないと」

「何だか、楽しみだね」

 予想に反して、周囲が盛り上がる。

 その理由として、対決が面白いからだ。

 嫌われ者の集団と思われるが、勝負に関しては別。

 毎回必死になって魔導師を相手にする姿が、切なさを醸し出し哀愁を感じさせるという。

「そういうことだから、会長に宜しく」

 怪しく光るエイルの瞳に、背中に冷たいものが流れ落ちる。

 油断したら、命の保障はない。

 ストーカー君は足早に退散すると、会長に連絡に行く。

 その姿は「逃げ去る」という言葉が似合っていた。

「バゼラード君、平気?」

「本気で魔法は使わないよ。校庭に、穴を開けたくない。それに修理代だって、馬鹿にはならないだろうし」

「穴を開けたら、教頭が煩そうだな」

「その教頭に、決闘を許してもらいに行きましょう。久し振りよね、あの研究会が勝負を挑むのって」

 この出来事は、すぐに学園中に広がった。

 これから開かれる決闘――もとい、お祭りに大勢の生徒が飛びつく。

 刺激が少ない学園生活。

 このようなやり取りは、いつでも歓迎という雰囲気だ。

 教師の間で、反対する者はいない。

 寧ろ「楽しそう」と言う教師もいるほど。

 それを知った生徒達は、良い場所で勝負を見ようと場所取りがはじまる。

 まさに今、史上最低の戦いがはじまろうとしていた。


◇◆◇◆◇◆


 決闘といえば、賭け事が定番。

 そのお約束に則り、オッズが公開された。

 圧倒的な支持を受けたのはエイルだが、たとえ配当が少なくとも確実に狙うというのが堅実者の考え。

 しかし、中には大穴狙いの生徒もいる。

 “もしも”という可能性に賭けているようだが、あまり期待はできない。

「な、何なんですか! 酷いですよ、あのオッズは」

「いやー、あれが正しいんだよ」

「そ、そんなー」

 公開されたオッズは「エイルが3に対し研究会は95」という常識的に考えてあり得ない数字を生み出すが、一部を除いて文句を言うものはいない。

 これが正しいという認識が多くの生徒にあった。

 何より、今までの成績が証明している。

 全戦全敗――これは、痛すぎた。