「セリア先生は、厳しすぎるよ。こういうのって、理論派タイプに出す課題だと思わないか?」
「お前だからじゃないか」
「そうなのかな?」
「だって、あれだけの解釈をするんだから」
「だからあれは、勉強したからだよ。勉強をしていなかったら、解釈だってできないだろうし」
「まあ、そうだけど……」
「だから、そう言われると困る」
と本人は語るが、エイルは「理論派タイプ」と、周囲から思われている。
その一番の原因は、クラスメイトが言う「本の虫」という部分。
エイルは時間を見付けては、読書を行っている。
それに留年なしで進級しているのだから知識はかなり高く、これで違うと否定するのは難しい。
「で、どうしてレポートを書いているんだ?」
「あいつのせいだ」
「ああ、なるほど」
「まったく、毎回」
「仕方ないよ、あいつだもん」
あいつというのは、エイルの友人を示す。
いやこの場合、友人というより悪友に近い。
何かトラブルが発生した時は必ずといっていいほどエイルを巻き込み、後始末を手伝わすという性質の悪い性格の持ち主。
しかしそれでも付き合っているのだから、エイルは実に偉い。
お陰で、巻き込まれるのは日常茶飯事。
それと共に、怒られる回数が増えていった。
なら代わりに、レポートを書かせる……という手もあったが、相手が相手だけにそれは不可能だった。
それに、その人物と学ぶ分野が違う。
もし書かせた場合、白紙で返ってくるのは間違いない。
「おかしなことばかりしているから、床に思いっきり張り倒してやった。そうしたら、罰としてレポートを書く破目になったよ。本当なら、反省文かな。まあ、レポートで助かったけど」
「まあ、そうだよね。おっと、授業を真面目に受けないと俺達も危ない。セリア先生が睨んでいる」
「そうだね」
先程から小声で会話を続けている二人に、セリアの鋭い視線が突き刺さる。
いくら名前が呼ばれないといっても授業は真面目に受けるべきと言っているのだろう、視線で圧力を掛けてくる。
流石にその視線での圧力は半端なく、二人の会話を止めるのに十分な効果があった。


