ロスト・クロニクル~前編~


「えっ! 嘘」

「本当よ。最悪」

 小声で会話をしていた生徒の一人が、大声を発してしまう。

 その声に気付いたストーカー君は、慌てて図書室から出ようとした。

 今の声で、エイルに気付かれた可能性が高いからだ。

 しかしエイルは、気付かないフリをしていた。

 いちいち反応していたら、疲れてしまうからだ。

「うわ、最低」

「しつこいのは嫌い」

 態と相手に聞こえるよう大声で言うとは、それだけこの研究会が嫌われていることを物語っている。

 異性にそこまで言われるとさすがにへこんでしまうが、だが任務を遂行しなければならない。

「皆に、教えないと」

「そうね。危険人物よ」

「でも、その前に――」

 恐れていたことが、現実となってしまった。

 それは「魔導研究会がエイルを追っかけていた」ということがバレてしまったのだ。

 その結果、素行調査が行えなくなる。

 いや、一番の問題は評判のがた落ちだ。

「バゼラード君」

 大勢に知らせる前に、まずはエイルから。

 そう思った生徒達は、いそいそとエイルに声を掛ける。

 だが、悪いことは立て続けに起こるもの。

 最悪なことに、この者達はエイルと顔見知りであった。

 「逃げ出そう」そう判断するも、簡単に見付かってしまう。

 尾行同様、隠れるのは下手らしい。

 ストーカー君は襟首を掴まれると抵抗空しく、エイルの前に引き摺り出されてしまう。

「なーんだ、君達か」

「知っているの?」

「有名だから。魔導研究会の生徒だろ?」

「やっぱり、あの研究会なの! 次は、バゼラード君を狙うなんて。身の程知らずというのは、貴方達のことを言うのね」

「ホント、手当たり次第に勝負を仕掛けるわね」

「勝負したいなら、していいよ。あまり付きまとわれると、こっちだって迷惑だし。なら、決着をつけてしまおう」

 エイルに不幸の手紙を送りつけていたのは、実は彼等であった。

 どうやら今回の件で我慢の限界が来たらしく、勝負し徹底的に叩き潰す気でいるようだ。

 爽やかな笑顔の裏に黒い一面が見え隠れするが、気付いている者は誰もいない。

 このオーラに気付けるのは、今のところラルフのみ。