「えっ! 嘘」
「本当よ。最悪」
小声で会話をしていた生徒の一人が、大声を発してしまう。
その声に気付いたストーカー君は、慌てて図書室から出ようとした。
今の声で、エイルに気付かれた可能性が高いからだ。
しかしエイルは、気付かないフリをしていた。
いちいち反応していたら、疲れてしまうからだ。
「うわ、最低」
「しつこいのは嫌い」
態と相手に聞こえるよう大声で言うとは、それだけこの研究会が嫌われていることを物語っている。
異性にそこまで言われるとさすがにへこんでしまうが、だが任務を遂行しなければならない。
「皆に、教えないと」
「そうね。危険人物よ」
「でも、その前に――」
恐れていたことが、現実となってしまった。
それは「魔導研究会がエイルを追っかけていた」ということがバレてしまったのだ。
その結果、素行調査が行えなくなる。
いや、一番の問題は評判のがた落ちだ。
「バゼラード君」
大勢に知らせる前に、まずはエイルから。
そう思った生徒達は、いそいそとエイルに声を掛ける。
だが、悪いことは立て続けに起こるもの。
最悪なことに、この者達はエイルと顔見知りであった。
「逃げ出そう」そう判断するも、簡単に見付かってしまう。
尾行同様、隠れるのは下手らしい。
ストーカー君は襟首を掴まれると抵抗空しく、エイルの前に引き摺り出されてしまう。
「なーんだ、君達か」
「知っているの?」
「有名だから。魔導研究会の生徒だろ?」
「やっぱり、あの研究会なの! 次は、バゼラード君を狙うなんて。身の程知らずというのは、貴方達のことを言うのね」
「ホント、手当たり次第に勝負を仕掛けるわね」
「勝負したいなら、していいよ。あまり付きまとわれると、こっちだって迷惑だし。なら、決着をつけてしまおう」
エイルに不幸の手紙を送りつけていたのは、実は彼等であった。
どうやら今回の件で我慢の限界が来たらしく、勝負し徹底的に叩き潰す気でいるようだ。
爽やかな笑顔の裏に黒い一面が見え隠れするが、気付いている者は誰もいない。
このオーラに気付けるのは、今のところラルフのみ。


