「嫌なことがあったんだ」
「そうだよ」
「マルガリータちゃんは……」
「違うよ。別のことが関係している」
マルガリータのことで怒っていると思っていたラルフは、その意外な答えに拍子抜けしてしまう。
同時に、どうしてエイルが怒っているその理由が気になって仕方がない。
ラルフは何の躊躇いもなくその理由を聞き出そうとするも、エイルの睨みによって見事に撃沈する。
「八つ当たりすることないだろ」
「そうなのかな? ラルフにも、関係あると思うけどね。まさか、忘れたというのはなしだ」
「何だろう……うーむ……はっ!」
「思い出したようだね」
「いや……まあ……うん」
「あれを、どうしてくれるのかな」
次の瞬間、額から大粒の汗が流れ落ちる。
確かに、ラルフは身に覚えがあった。
それは数日前の出来事だが、今のラルフには全く関係ない。
あれは遠い昔の出来事――もとい一時的な気の迷いが関係しているが、今のラルフの全く関係ない。
だが、そう簡単に片付けられる出来事ではない。
「そ、それは……」
「それは?」
「俺が、悪いんじゃない。ただ「成功すれば」の話だったのが、知らないうちにあそこまで大きくなってしまったんだ。創立はしたけど、その後の関与はしていない。だから……御免」
「素直に謝ってくれるのなら、あれを何とかしてくれないか。お陰で、平穏な日常が奪われた」
「努力はするよ」
「努力は、当たり前だ」
実は、数日前からエイルはあることに悩まされている。
その原因は、何とメルダースの生徒にあった。
はじめは適当にあしらっていた、最近ではしつこく付きまとってくる。
流石にここまでされると迷惑なので、このことを担当のセリアに話したところ少しは静かになった。
しかし、それで問題が解決したわけではない。
ただ、方法が直接的ではなく間接的に変化しただけ。
それは、おかしな内容の手紙が、毎日のように届けられるようになった。
一種の「不幸の手紙」というべきものか。届いた瞬間、エイルは中身を確認せず破り捨てている。


