ロスト・クロニクル~前編~


「嫌なことがあったんだ」

「そうだよ」

「マルガリータちゃんは……」

「違うよ。別のことが関係している」

 マルガリータのことで怒っていると思っていたラルフは、その意外な答えに拍子抜けしてしまう。

 同時に、どうしてエイルが怒っているその理由が気になって仕方がない。

 ラルフは何の躊躇いもなくその理由を聞き出そうとするも、エイルの睨みによって見事に撃沈する。

「八つ当たりすることないだろ」

「そうなのかな? ラルフにも、関係あると思うけどね。まさか、忘れたというのはなしだ」

「何だろう……うーむ……はっ!」

「思い出したようだね」

「いや……まあ……うん」

「あれを、どうしてくれるのかな」

 次の瞬間、額から大粒の汗が流れ落ちる。

 確かに、ラルフは身に覚えがあった。

 それは数日前の出来事だが、今のラルフには全く関係ない。

 あれは遠い昔の出来事――もとい一時的な気の迷いが関係しているが、今のラルフの全く関係ない。

 だが、そう簡単に片付けられる出来事ではない。

「そ、それは……」

「それは?」

「俺が、悪いんじゃない。ただ「成功すれば」の話だったのが、知らないうちにあそこまで大きくなってしまったんだ。創立はしたけど、その後の関与はしていない。だから……御免」

「素直に謝ってくれるのなら、あれを何とかしてくれないか。お陰で、平穏な日常が奪われた」

「努力はするよ」

「努力は、当たり前だ」

 実は、数日前からエイルはあることに悩まされている。

 その原因は、何とメルダースの生徒にあった。

 はじめは適当にあしらっていた、最近ではしつこく付きまとってくる。

 流石にここまでされると迷惑なので、このことを担当のセリアに話したところ少しは静かになった。

 しかし、それで問題が解決したわけではない。

 ただ、方法が直接的ではなく間接的に変化しただけ。

 それは、おかしな内容の手紙が、毎日のように届けられるようになった。

 一種の「不幸の手紙」というべきものか。届いた瞬間、エイルは中身を確認せず破り捨てている。