薄暗い室内に置かれた、ひとつの円卓。

 それを囲むように座っている人物は、皆まだ若かった。

 だがそれぞれの顔に浮かぶ表情は真剣で、発せられる雰囲気からもそれを感じ取れる。

「皆に集まってもらったのには、訳がある」

 沈黙を破るかのように、言葉が発せられた。

 その瞬間、一斉に言葉を発した人物に視線が集まる。

 そして、次の言葉を待った。

 言葉を発した若い男は視線を向ける一人一人を見回すと、重い口を開くかのように言葉を続けた。

 その発言に周囲がどよめき、互いの顔を見合す。

「ほ、本当ですか?」

「間違いない」

「そ、それでは」

「これで、我等の悲願が叶う」

「おお、夢にまで見たことが」

 その瞬間、歓声が辺りに響き渡った。

 椅子に腰掛けていた者達は一斉に立ち上がり、隣の者と喜びを分かち合う。

 だが男が発した言葉に、その歓声も一瞬にして静まり返ってしまう。

 そう“あれ”に対しての問題を解決しないといけず、それは世にも恐ろしいものといっていい。

「で、でも……」

「あれは、ちょっとな」

「怖いとしか、言いようがないし」

「そうだよ。俺は、死にたくない」

 集まった者達の弱気な発言に男は円卓を叩き、激を飛ばす。

 “あれ”の問題を何とかしなければ、先に進められないからだ。

 わかっていても、身体が動かない。

 それだけ“あれ”は、恐ろしい。

「会長はいいですよ、慣れていますから」

「そうですよ。噂によると、抵抗力が身についたというじゃないですか。それは、凄いことですよ」

「うーむ、そう言えばそんな気が……」

「では、会長がお願いします。これも、皆の為ですよ。ここで成功をしたら、会長は英雄です」

「え、英雄」

 その言葉に、会長と呼ばれた男が微かに反応を見せる。

 確かに英雄と呼ばれることは、悪くはない。

 しかし、やはり“あれ”は、怖いことには変わらない。

 だが周囲は一斉に盛り立て、会長がやるように促してくる。

 どうやら、嫌な役割を押し付けようとしているらしい。