ロスト・クロニクル~前編~


 エイルは、理想を現実にできる存在。

 だからフレイは、クローディアに一度戻ることを願った。

「話は横に行ってしまったけど、言い訳はしないことにするよ。下手なことを言ったら、後が煩いし」

「正直に言えば、わかってくれます。ジグレッド教頭なら……あの方は、内面は優しい方です」

「そうかな?」

「はい。もしもの場合は、私も説得いたしましょう。エイル君には協力すると、申しましたので」

「そう言ってもらえると助かる。有難う」

 満面の笑みを湛え、感謝の気持ちを言葉に表す。

 その久し振りに見たエイルの笑顔にリデルは、再び頭を垂れていた。


◇◆◇◆◇◆


 正直な訴えにジグレッドは、リデルの手伝いに関する許可を出した。

 「彼女は他人ではなく、メルダースの卒業生」というのが建前上の理由であったが、本当の意味は「少しぐらいは、大目に見てやっても構わない」という、エイルに対しての優しい心遣いが関係していた。

 ジグレッドに礼を述べたエイルは、リデルを連れシーツが干されている場所へ並んで向かう。

 途中、自室の窓から見た少女の姿が目に飛び込んできた。

 その少女は駆け足で、二人の横を通り過ぎていく。

 その瞬間、エイルの足が止まった。

「どうかしましたか?」

「確か、あのくらいの年齢だったかな」

 その言葉が誰を示しているのか、リデルは一瞬にして答えを導き出す。

 エイルが言っているのは、女王シェラのこと。

 確かに年恰好は先程の少女と一緒だが、雰囲気はまるで異なる。

「はい。大きくなられました」

「僕が見た時は、8歳の時だった」

「お側に仕えるようになったら、いつでも……」

「そうだね」

 エイルは、いつかシェラに会う時が来る。

 それは、親衛隊の一員になった後の話。

 しかし、ジグレッドと話していた時に上げられた「家名の問題」ということも関係しているので、躊躇いの方が大きい。

 それに自国の女王の負の部分を見るのも、実に辛いものが存在する。