だか、16歳の少年に何ができるというのか。
ただ、魔法を学ぶことを楽しいと思っている普通の子供に――
エイルは、無力に等しい。
何気なく窓から外を覗く。
すると、人の気配を感じた。
視線を下に向けると、一年生らしき生徒が探し物をしていた。
緑色の髪を左右に縛った、小さな女の子。
懸命に草を掻き分け、目的の物を見つけ出そうとしている。
一体、何を探しているのか。
エイルは周囲を見回し、少女が探している物を探してみる。
少女が探している物は、簡単に見付かった。
枝と枝の間に、探し物の紙飛行機が挟まっていたのだ。
「これがそうか」と、確信すると、エイルは小声で呪文を唱えると指先を紙飛行機向け魔法を発動する。
すると生み出された風の流れは紙飛行機を包み、枝から地面へ落下した。
と同時に、エイルは身を屈め姿を隠す。
相手から礼を言われるのは構わなかったが、そのようなつもりで行ったわけではないので、礼を言われるのは好まない。
そして暫くした後、少女の嬉しそうな声が聞こえてきた。
どうやら、目的の物は先程の紙飛行機で正解のようだ。
エイルは窓から顔を覗かせると、紙飛行機を持ち走って行く少女の後姿に満面の笑みを浮かべた。
無邪気なその姿は実に微笑ましいが、同時に心の中に冷たいものが広がっていく。
「初歩の魔法練習というところかな」
風属性の魔法の練習か。遊びの中から学ぶ魔法。
意外にもそのやり方は効果的なことが多く、エイルも入学当初は先程の少女のように遊びの中から魔法を学んだ。
勿論、加減を考え。
無意識に、少女と母国の女王を重ねてしまう。
メルダースの入学可能の年齢は12歳。
この歳は、シェラと同じ年齢。
もし少女が12歳であったら、女王シェラと何一つ変わらない。
何もなく平和な毎日が過ごせ、シェラという少女が女王でなく普通の女の子だったらとしたら――
過去、エイルの父親フレイがシェラは魔法が好きだと話してくれた。
だとすれば、メルダースに入学していただろう。
そして、多くの生徒と共に魔法を学んでいた。
このように、面白おかしく。
何と無常か。
エイルは手に持っていた手紙に再び目を通すと、何を思ったのかいきなり握り潰してしまう。
更に小声で呪文を唱えると、この手紙の存在を消し去る。
赤い炎が生み出され、手紙は一瞬にして跡形もなく消え去ってしまう。
それはまるで何かを切り捨てる、そんな行動にも見えた。


