「強いからこそ、脆さも兼ね備えています。しかし悩み苦しんでいる時に、側にいることができません。とても悲しく、辛いです。ですがフレイ様は、息子の成長を待ち望んでいます」
「迷うという心は、人間としての証だ」
「しかし、成長しております」
「そうだな。同時に、難しい問題だ。しかし、相変わらず堅苦しい。昔と変わっていないな」
「そうでしょうか」
「ああ、同じだ。学園長が見たら、面白いと言うだろうね。あの方は、明るい人物だからな」
「……はい」
「しかし今は、堅苦しいのも必要だな。リデル・エレーニアよ。この学園で学んだことを決して忘れてはいけない。知識は、多くのものを守る武器となる。特に現在の状況では、そうだろう」
「存じております」
ジグレッドの言葉に、リデルは力強く頷き返す。
そして、定められた運命を受け入れる決意をした。
◇◆◇◆◇◆
寮の自室に戻ったエイルは、部屋に入ると同時に寝台に倒れこんでしまう。
そして側に置かれていた枕に顔を埋めると、ジグレッドとリデルの言葉を思い出す。
その瞬間、胸がチクっと痛み出す。
一度、戻ってくるように。
その言葉は、全てを一変させてしまうほどの力を持っていた。
このように寮の寝台で横になることも、魔法を学ぶことも。
また、友情さえも。
全て、全部。
積み重ねられた年月が、一瞬にして消え去ってしまいそうだ。
それが、切なく哀しく辛かった。
正直、失いたくないのが正直な思い。
だが、我儘は通じない。
クローディアに帰郷するということは「与えられていた使命を全うせよ」ということになる。
それは生まれた時から決められており、抗い否定さえ許されない事柄であった。
其処に少しでも自分の意思を反映させることが可能なら――だが、その願いが届くことはなかった。


