だが、何故か躊躇いの方が強い。
エイルはリデルの顔を一瞥した後、俯いてしまう。
結論は急いだ方がいいとわかっていても、なかなか答えが見つからない。
そんなエイルの気持ちを察したのか、ジグレッドが口を開く。
「答えが見つからないようだな」
「……すみません」
「いや、唐突な話だ。無理もない」
「暫く、考えます。勿論僕の立場を考えると、このようなことを言ってはいけないのですが……」
「いや、仕方がない」
独りになり冷静に考えれば、適切な答えを導き出せる。
それに混乱している頭では、良い結論は出ない。
ジグレッドはそのことを諭すように言うと、エイルに正しい結論を出すよう促す。
しかしエイルは結論を出していたが、それを言葉に表さないだけ。
それにこの結論次第で、人生を大きく左右してしまう。
それに帰れば縛られ、自由がないに等しい生活となってしまう。
魅力的なメルダースの生活を失いたくない――
それがエイルの答えであった。
「……エイル様」
リデルの言葉に、エイルは過敏に反応を示す。
過去にそう呼ばれていたことを思い出し、無性に悲しくなってしまう。
エイルは溜息と同時に椅子から腰を上げると、ジグレッドに向かい深々と頭を垂れる。
「部屋で、休みます」
「答えが決まったら、来るがいい」
「……はい」
踵を返し、部屋から出て行こうとする。
そんなエイルを呼び止めようとリデルは何か言葉を発するが、上手く言葉にならない。
もしかしたら、呼び止めようとする意思とは別に、呼び止めてはいけないという気持ちがあったのだろう。
リデルは静かに、エイルの後姿を見送る。
「お強いです」
「強さだけではなく弱さも持ち合わせてこそ、人として優しくなれるのだ。そう、彼のようの」
暗い表情を浮かべるリデルに、ジグレッドは優しく言葉を掛ける。
その何気ない気遣いに、口許に緩めていくと無言で頷く。
エイルが背負い、その身で感じているもの。
全てとは言えないが、リデルは理解しているつもりだった。
だからこそ、無理に呼び止めようとはしない。


