別に、恨むという感情はない。
ただ、エイルにとって寂しかった。
「憎いとは思わなかった?」
それは、唐突な質問であった。
その言葉にリデルはハッとなり、息を呑む。
憎い――それは答えにくい内容であったが、質問されたからには答えないといけない。
それに、エイルに嘘は通じない。
「憎いと思ったことは、一度もございません」
リデルの発した言葉に、嘘は感じられなかった。
それは、真意から述べた言葉であったからだ。
今回のことは、エイルが悪いのではない。
全ては運命のままに進んだものであって、恨むということはできない。
それが武力で強制されたとしても、リデルは首を縦には振らない。
リデルは、エイルの心内を理解しているつもりだった。
痛く苦しく――そして、切ないまでの心情を。
それはエイルを押し潰そうとし、その身に背負った役割の大きさを物語っていた。
「なかなか結果が出なくて、時間ばかりが掛かってしまう。もっと僕が……だから、そう思った」
今まで、そのことが心配であった。
憎らしいと思われているのではないかと考え、魘される毎日が続いた。
しかし真相を知っている者はそのようなことを口にはせず、寧ろ憐れみる。
「そのようなことはありません」
それは、優しい言葉であった。
それにより、自分エイルは一人ではないということを知る。
大勢の味方が側にいて、支えてくれている。
その時、ラルフの顔が思い浮かぶが、彼は別問題。
確かに友人同士と思えなくもなかったが、支えるというより迷惑を掛けることが多い。
それに過ぎ去った時間は、取り戻すことはできない。
そして誰かを想うという心は、変わることはない。
エイルにとってリデルの発言は嬉しかったが、決断はできないでいた。
怖い……正直、その思いが強かった。
エイルの居場所というのは、リデルが指し示す場所――クローディア王国。
そもそも、居場所とは何か。
あるべき場所。
存在するに正しい所。
そのようなことを、誰が決めたというのか。
だが、よくよく考えれば言い訳を繰り返していることになる。
自分は〈バゼラード〉の名前を継ぐ者であり、父親との約束を果す為にメルダースに入学した。
それだというのに、父親は一度戻って来いと言っている。
この場合、従うのが懸命だろう。


