「僕は、まだ若いよ。父さんのようにはできない。いや、父さんが偉大すぎる。高い壁だよ」
「私が、何とかいたします」
「そこまでしなくともいいよ。そのようなことをしてしまったら、リデルの立場も危うくなる」
本当に、認めてくれるというのか。
中には、それを望まぬ者も存在する。
それは、女王であるシェラから笑顔と言葉を奪った奴等だ。
邪魔者だ――
ただ、それだけの理由で。
そう、いらぬ存在は彼等の立場を危うくする。
フレイは、強い発言権を有していた。
いやフレイという存在がそうさせているのではなく〈バゼラード〉と言う名に、力があったのだ。
その為、一部の者達から疎まれていたという。
エイルもまた、その名を継ぐ者。
嫌でも周囲の視線を感じてしまい、それは今も同じであった。
「本当は――」
建前などいらない。
心の底の言葉を聞きたかった。
リデルの真意は――エイルという存在を、どう思っているのか。
本当に、望んでいるのか。
それとも、受け継ぐ名を求めているのか。
エイルは、リデルの顔を確認してしまう。
知的で冷静な顔つきが、其処にはあった。
その表情から、迷いなど感じることはない。
ふと、エイルが自分の顔を見ていることに気付いたリデルは「どうしました?」と、尋ねる。
しかしエイルは無言を続け、自問自答を繰り返す。
リデルから、本音を聞くのが恐ろしかった。
名を求めている――
そのように言われたらと、葛藤する。
無論、リデルはそのようなことは言わない。
頭ではそれがわかっていても、感情がそれに伴わない。
全身が奮え、エイルの身体を嫌な汗が流れ落ちる。
自分という存在は――
何故、生きているのか。
そのようなことを考えたことは、一度としてない。
いつの間にか魔法を学び友と語り合う此方が現実で、リデルが語る世界が幻だと思ってしまった。
そしてこの会話も、幻の中で語られる出来事。
朝が来れば、普段の生活が待っている。
そしていつものように勉学に励み、新しい魔法を学び訓練を行なう。
またテストの点数が悪かったと友人達と嘆き、ごく普通の少年が体験する学園生活を送る。
苦しくも楽しい、メルダースの生活。
リデルの話が幻と望もうとも、突き付けられるのは現実。


