「お久振りです。お元気そうで、何よりです」
エイルに声を掛けてきたのは、銀色の短髪を持つ女性。
青色の双眸は美しく輝き、長年会うことができなかった恋人に出会ったような、そんな色を湛えた瞳をエイルに向けていた。
彼女は椅子から腰を上げると、エイルに深々と頭を垂れる。
その動きは懐かしい出会いというわけではなく何か別のことを連想してしまうが、エイルは彼女の行動を理解していた。
名前は、リデル・エレーニア。
四年前に会った時は、歳は23だと言っていた。
だとすると、今は27歳。
外見は四年前から、全く変わっていない。
そして彼女は、メルダースの卒業者で優秀な魔導師だ。
また、エイルの目標でもあった。
魔導師の道を選んだのは、リデルの存在が大きく関係していた。
エイルが幼い頃、リデルは様々な魔法に付いて語ってくれた。
難しい呪文を唱えるだけで使うことができる、不可思議な力。
エイルは一瞬にして魔法の虜になってしまい、自分も使えるようになりたいと思いはじめた。
だからこそ、入学と同時に一流の魔導師になりたいと決めていた。
いや、理由は他にも存在する。
力が欲しい。
そう思った時から、進むべき道が決まっていた。
エイル自身が気付いていないだけで、運命の導きのままに進んでいたのだろう。
現にメルダースの生活に馴染み、多くの魔法を学んだ。
リデルの言葉に、エイルは無言で頷く。
意外な人物の登場に、正直どうしていいか迷っていた。
彼女に会うということは、忘れていた――いや、忘れようとしていた現実を思い出す。
「顔色が優れないようですが、いかがいたしましたか? 体調管理をしませんと、心配する者がいます」
「いや、何でもない……」
相変わらずの敬語であった。
そんな言葉を使わなくていい。
そう思うが、言葉にできないでいた。
それに、偉いのはエイルではない。
それは他の人物で、エイルは自身のことをそれの「付属品」のように考えており、だからこそ敬語を嫌った。
しかし、言葉に出したところでどうなる訳でもない。
それにエイルは、強制はしたいと思わなかった。
相手がラルフであったら、強制していたに違いない。
それにリデルは義を弁えているので、強制すれば逆効果になってしまう。
また、こうする理由もわからないこともない。


