魔法の練習に時間を使うという方法もあるが、疲れた身体で魔法を使うのは禁物。
意識が集中できず、失敗を招く。
(そうだ、自分の服も洗濯しないと)
学生の大半が専門の洗濯職人に任せてしまうのだが、金に余裕のない生徒は自分で洗濯を行う。
普段は見ることができない光景であるが、休みの日になると大勢の生徒が洗濯をする光景が目撃できる。
メルダースという一流の学園であっても、生徒の家庭の内情が一致することはない。
逆にこのような光景が見られるということは、貧富の差に関係なく多くの生徒が公平的に学んでいるということを示す。
(シーツの取り込みまでに、終わらせないと)
何事も、早い方がいい。
エイルは立ち上がると軽く運動をし、これからの重労働に備える。
一体、部屋にどれだけの洗濯物を溜めていたか。
確か日にちに換算すると、約一週間分。
それも冬ではなく、夏の洗濯物。汗を掻いたら着替える。
それを繰り返していたので、相当の量になっているだろう。
こうなるとシーツを洗うより、手間が掛かりそうだ。
しかしその洗濯物は自分が出したものであり、自分が定期的に洗濯を行なわなければどんどん溜まっていく。
只今金欠中なので、泣くに泣けない。
一定の金銭を持っていればこのように苦労しなくて済むのだが、無いものは無い。
それにどのように足掻いたところで、金が増えるわけでもない。
その時、エイルの名が呼ばれた。
誰が呼んでいるのだろうと周囲を見回すが、近くにそれらしき人物はいない。
それなら建物の中から呼んでいるのだと判断したエイルは、校舎に視線を移す。
彼の判断は、正しかった。
今エイルの名前を呼ぶのは、彼の担当教師のセリア。
彼女の真剣な面持ちに「何か悪いことが起きる」と、悪い方向に思考を働かせ、顔から血の気が引いていく。
セリアのもとへ行くのを躊躇うが、行かなければ行かないで何かを言われるかわかったものではない。
渋々ながらセリアのもとへ行くと、彼女はいつもと変わらない優しい表情を浮かべている。
どうやら、機嫌が悪いわけではない。
そのことにエイルは胸を撫で下ろすと、用件を尋ねた。
「貴方に客人が来ているわ」
「お客……ですか」
自分を訪ねて来る人物は、何処の誰だろうか。
だが、考えてもそのような人物は思い付かない。
知り合いと呼べる人物は普段手紙のやり取りをしているので、自分を訪ねてくるなら事前の連絡があるが、事前連絡は全くない。
それにより、エイルは不審人物の登場と勘違いしてしまう。


