精霊の謳姫

______
___________




「まさか、ノヴァが裏切るとは…。
その上みすみす姫君を連れ去られるなんて、我が魔導師一族の恥。お許し下さい。」



赤髪の女魔導師を見送った後、
臣下の筆頭格を担う男が口を開いた。

国王の傍らで胸に手をあて腰を折るのは、
国王付きの上級魔導師ーーリドル。



「…あの小僧。
能力を買って生かしておいてやったが、
この儂を悖りおって…!」


「記憶を封じ、再三教え込んできたと思っていたのですが…我々の落ち度です。
見つけ出した暁には、処遇は委ねて頂いても?」



リドルは口元を不気味に歪ませ、狂気に瞳をギラつかせる。
そこにあるのは、一族の犯した失態に対する呵責などではなく…



「…ならぬ。
見つけ次第、我が目前で殺せ。
二人ともだ。」


「…御意。」



残虐な愉悦___。

国王は玉座の隣に置かれたバスケットの中から、割れたザクロを手にとった。



「城の兵を集めて捜索に向かわせろ。
魔導師も、一刻も早いリディアの保護に全力を尽くせ。良いな。」



熟れたザクロから滲み出た赤い汁が、
ポタリと床に垂れる。



「承知しました。」



国王はしばらくニ、三と果汁が滴る様を眺めていたが、握り潰されたザクロから血反吐を吐いたように赤が広がると、
その亡骸をドシャリと赤く染まった床に捨てた。



怒り心頭といった様子の国王にやれやれと苦笑しつつ、リドルは下働きの魔導師に掃除を命じて彼もまた、

颯爽と王宮を後にした。