不思議な光景だ。

建ち並ぶ店の明かりが通りを照らし、夜だと言うのに人々は飲んで騒いで笑い合っている。
屋根から屋根へ、まるで夜の暗がりを嫌うかのように提灯や電球が連なり、途切れない。


活気ある賑やかな風景には目もくれず、上手く人を避けながら前を早足で歩くノヴァ。
そんな彼に手を引かれるリディア。
そしてその後ろをアレンが着いて行く。


リディアとしては初めて見る城下町に胸が躍るようだったが、同時に気になっていることがあった。



「ねぇノヴァ、サリーは?」



ーー今この場に、欠けた存在。



「サリーは、留守番。
こんな時くらいリディアのおもりから
解放してあげなよ。あーあ羨ましい。」



いつものように憎まれ口をたたくのは変わらなかったが、
その間も彼は一度も振り返ることなく、ただ急くように人混みを縫って繁華街から遠ざかって行く。


どこか焦っているようにも見えるノヴァ
の後ろ姿に、リディアは妙な違和感を憶えた。

気のせいだと言われてしまえばそれまでの、不確かなものではあるのだが…



正直そちらが気になって、城下町を歩いているということを未だ実感出来ていなかった。