精霊の謳姫



「リディア様は一通りやっておいででしたよ。
それに加えて、色々な国の資料も自ら進んで読まれていましたし…」



二人の様子を見守っていたアレンが
訝しむ視線を送るノヴァに、棚に並べられた諸国の資料を何冊か手にとって見せた。


何十冊とあるそれらは全てこの城にある書庫に収容されているもので、
豊富かつ膨大な書物の収容量を誇るそこは、ノヴァもよく利用している場所だ。

確かに、彼も何度か彼女が資料に読みふけっているのを目撃したことがある。

しかしそれ故に納得がいかない。



「それだけ熱心に勉強して、
どうしてこんな簡単な国名が答えられないんだよ。

…ねぇ、聞いてるのリディア。」



答えられないのも当然、
彼女の興味の焦点が国名に無い為なのだが…


無理もない。
リディアも年頃だ。

未知なる外への憧れは年々増していく一方で、歳を重ねる度に行動の制限が厳しくなっていく。



正直、そんな窮屈な日々にリディアは嫌気がさしていた。


内側からの景色はいつも、彩り豊かに様々なものが光り輝いて見える。


…規則や身分に囚われる日々。
会いたい人は傍におらず、城外への外出はおろか、異母の兄妹同士の面会さえ許されない…。