精霊の謳姫


木から落下した案件以来、

リディアの見張りは(主にアレンによって)強化され、事実上は何事もない穏やかな日々が続いた。

というのも、従者(重ねて言うが、主にアレン)の尽力の甲斐あって全て未遂で防がれているからだ。



二人の魔導師達とは日に日に顔を合わせる機会が減りつつあったが、

世間は祭日であろうこの日は違った。



「う〜ん…」



陽射しを遮る大木が、青々とした葉を
揺らす窓辺。

涼しい風がふわりと吹き込むこの部屋で、
教本を開き知識を習得するという行為自体は何ら変わらない。

日課のそれに変化をもたらすのは…



「”サハルバット”。」

「!それだわ!!
ありがとうノヴァ。」



ノヴァが教師にあたっていることだ。



「ねぇ、リディア。
僕が出してあげた課題本当にちゃんと
やったの?
全然成果が見られないんだけど。」



”サハルバット”。
西の外れに存在する、貿易港で有名な国だ。
青い空を映す広大な海はエメラルドグリーンに澄んでいてそれは美しいのだという。


前回山のように彼から出された課題に
泣き言を零していたリディアだったが、
それでも言い付け通りきちんと終わらせた。


しかし、どうにもその国の街並みにばかり気をとられてしまい、国名まで頭に入っていないのが現状であった。