精霊の謳姫



…やはりそう上手くはいかないもので。


悲鳴をあげる間もなく、
仔猫に描いた未来通り、リディアの身体は重力のままに短い芝の生えた地面へと落ちていく。




恐怖に固く目を閉じた刹那___。




覚悟していた痛みに代わり、ふわりと、
それでいて冷たい感触に抱かれた。



「貴女という人は…」



眩い太陽を反射する、白銀___。



「ア、アレン!?」



驚きや安堵、感情が様々交差する中で
木漏れ日を背にする彼をただ”美しい”と感じた。

少しだけ息を乱しながら、呆れた様子で彼女を見つめる琥珀の双眸は、さながら宝石のようだ。

柔和な美しい顔立ちと、他への礼儀正しさ、そしてその細身でありながらかなりの剣豪であるというギャップが良いと、城の女中達が揃って噂していた。



そんな白銀の騎士はどこか惚けた主を立たせると、怪我がないか一通り確認してから大きな溜息をついた。



「…リディア様、
いい加減になさってください。」



表情こそ穏やかなものの、溢れ出る雰囲気は全く異質なもので。

じわりと嫌な予感がよぎったリディアは咄嗟に経緯を説明せんと口を開く。



「ち、違うのアレン!
その…木に仔猫がいたものだから…!」


「ほう…?
で、その仔猫はどこにいるのですか?」



全く笑っていない眼差しに見据えられ、慌てて辺りを見回すも既にその小さな姿は跡形もなく…

恐る恐る視線を騎士へと戻して__



…リディアの表情が凍りついた。





「リディア様。」