精霊の謳姫







『そんな顔をしないで、アレン…』



記憶に残っている幼い日の少女。
今も無邪気に笑う彼女は、あの日から何も変わらずそこにいた。




少女との追憶__。




日課である鍛錬を終え、人のいない庭園の裏で物思いに耽っていると、その少女は決まってやってきた。


浮かない顔をする俺の正面にまわり、
彼女はにっこりと微笑う。



『大丈夫よ!
貴方は、とっても強い心を
持っているもの。』



己の全てをかけてでも守り抜きたいと、
そのためなら命さえ厭わないと、
そう思える主君に仕える___

騎士を生き、極めんとする者にとって
それは絶対であり、至高であった。

だが…

どれほど強さを手に入れてもその力を
捧げる主が見つからず、
俺は剣の腕を磨く意味さえ見出せなく
なっていた。


そんな自分に、少女は穏やかな表情で微笑みかけ、握りしめた冷たい拳をその暖かな両の手で包み込んだ。



『見ててね…』



彼女は包んでいた俺の左手をおもむろにひっくり返すと、指先でその平に触れた。