精霊の謳姫



突然のことに戸惑いを隠せないリディアは、どうにかこの状況から抜け出そうと試みるも、手を封じられている挙句、身をよじるスペースさえなかった。



ノヴァの距離が、近い。

ノヴァが耳元で喋る度に、

くすぐったくて仕方がない。





「本当、君って頑固だよね。
…まだ怒ってるの?」



怒ってる。

…はずだったのに。
見つけてしまった。


色白の肌に似つかわしくない、うっすらと残る目元の影。

それに重ねて、少しだけ拗ねたようなノヴァの声に、なんだかそんな気も次第に薄れてしまった。


思えばノヴァは、悪態はつくけれど、
それでも仕事はちゃんとこなしているから…

もしかしたら、昨日は魔導師のお仕事で遅かったのかも知れない。

寝不足だったところに私が騒いでしまったのだとしたら…



(謝るのは、私の方だわ…)