今日は俺たちの卒業式。


さっきまでクラスの奴らと一緒に大泣きして、全員で写真を撮ったりアルバムに寄せ書きしたりしてた。

いつまでもダチだからな!とか言って野郎二人で抱き合って泣いたりしたりな。


今は俺一人きりになった教室で、頬杖をついて窓の外を眺めていた。

ああ、もう卒業なんだなと黄昏てみたりなんかして。




俺には好きな女の子がいた。


名前は松本美咲(まつもとみさき)。

背が高くてすらっとしてて、美人で気が強くてしっかりしてるくせに脆くてどこか危なっかしい。

なんつーか、守ってやりたくなるような女の子だった。


優しい笑顔で「コタ」と呼ばれるのが好きだった。

すねてる顔も、怒った顔も、悲しそうな顔も、喜んでる顔も、満面の笑顔も、すべてが愛おしかった。


美咲が愛称で呼ぶのは俺だけ。男子で仲良く話すのも俺だけ。

美咲にとって俺は“特別”なんだって思ってた。

つーか、両想いのつもりだった。


高校は頭の良い美咲に合わせて、必死で勉強して同じ高校に受かった。

これからも一緒だね!と言って美咲は俺に抱き着いてきて、嬉しそうに笑った。

いや、これもう男として期待しても良かったと思う。ほんとに。

それなのに。


告白しようとした今日、美咲の指に光る指輪を見つけた。


誰が予想しただろう。

美咲にはすでに彼氏がいて、その人は一つ上の先輩で。

その人がいる高校を美咲は受験した、だなんて。