「あんたねえ、もうすぐ卒業だってわかってるの?!コタロウくんと話せるチャンスは今しかないのよ?いーい?卒業までにコタロウくんとちゃんと話して想いを伝えるの。でないと多分、香織後悔するよ。……あの時ああすればよかったってあとで思っても、遅いんだからね。」
最後、皐月ちゃんはぎゅっと唇を噛みしめて悲しそうにうつむいた。
中学二年生の時、皐月ちゃんには彼氏がいたらしい。
そのときはまだ私と皐月ちゃんはそんなに仲良くなかったからよくわからないけれど。
つまらないことでケンカして、意地を張って、「大嫌い」と心にもないことを言ってしまった皐月ちゃん。
彼と口を聞かない、目も合わせない日々が続いて、一週間後。
仲直りできないまま彼は引っ越してしまった。
彼が引っ越したことを皐月ちゃんが知ったのは引っ越しの翌日。
彼の友達から聞いたと言っていた。
「知らなかったの?!」とひどく驚かれたそうだ。
そんな経験をしたことのある皐月ちゃんだからこそその言葉にはすごく重みがあった。
……私も勇気を出して、話しかけてみようかな。
結局卒業するまで琥太郎くんと話す機会は一度もなかったのだけれど。

