「ふ~ん?素敵な思い出じゃなぁ~い。」
丁度二年前の私の初恋の話を聞いていた親友の皐月(さつき)ちゃんはにやにやと笑った。
あんまりこういう話は聞くことはあっても話す側になることなんてなかったから気恥ずかしい。
正直、恋バナはあんまり得意じゃ…ない。
「それで?」
「それでって?」
「なんか進展はあったんでしょうか香織(かおり)サン?もう出逢いから二年も経っているのですが?」
皐月ちゃんの質問に思わず視線をそらす。
やってしまってから気が付いた。これは「なにも進展はありませんでした」と言っているのと同義である。
心なしか皐月ちゃんの目が鋭くなった気がした。視線がイタイ。
「まさかとは思うけど。あれからひとっことも話さなかった、なんて……言わないわよねえ?香織。」
「……そのまさかでございます。」
「あ゛?」
「怖いよ皐月ちゃん!」
いつもより一オクターブくらい低い声ですごまれると流石に怖い。
意味がないとはわかっていながら近くにあった教科書でとっさにガード。
しかしそれはすぐに皐月ちゃんに奪い取られてしまった。
「ウブでネンネな香織に教えてあげるわ。恋は先手必勝!迅速果断に行動せよ!」
「迅速果断って…?」
「すばやく決断し、実行すること!あたしの座右の銘よ。」
「大変参考になったんですが皐月ちゃん。胸ぐら掴むのやめてもらえませんか?てゆーか目が据わってますよ……」

