でも連絡は一切とってないって言ってたはずだ。
やっぱり祥吾ってよくわかんねー。
ダベりながらゆっくり歩いてたら、入学式に遅刻しそうになったので二人で慌てて走った。
「おっ!琥太郎、俺ら一緒のクラスだぞ!」
「はぁ?!」
「……なんでそんな嫌そうな顔すんの?」
「別に」
「琥太郎が冷たい」
わっと泣きまねをする祥吾だけど、178センチの男が泣いてても可愛くない。つーかキモい。
入学式だからかいつもよりテンションが高くて、はしゃいでいた祥吾が急に真剣な表情になった。
不思議に思って視線をたどる。
「……皐月?」
祥吾が呟いた名前は祥吾の元カノ―—いや別れてないのか?――の名前で、その女子の隣にいるのは。
うさぎちゃん?
祥吾の元カノは泣きそうにくしゃっと顔をゆがめると、祥吾の名前を呼んだ。
「祥吾……なんで……?」
「久しぶりだな…皐月。一年半ぶりくらいか?」
「一年半ぶりくらいか?じゃないわよっ!いつ戻ってきたの?祥吾…」
「3月の終わりごろかな。」
「じゃあなんで連絡くれなかったのっ…ばかぁ……」
祥吾の肩をポカポカ叩きながら、元カノは泣いていた。
その隣のうさぎちゃんは俺を見ながらその大きな瞳をまあるくさせていた。
…なんかすれちがうばかりでちゃんと顔見たことなかったけど…可愛い?かも……
「……うさぎちゃん?」
あ、やべっなに言ってんだ俺。
そもそも彼女の名前は“うさぎ”じゃないだろう。多分。
「こたろう、くん……」
あ、俺の名前、知ってたんだ。
なんて俺はこの場に似合わないことを考えていた。

