後ろから誰かに飛びつかれ思わずよろめく。
倒れそうになるのをこらえて、後ろを振り向く。
そこには予想した通りの人物がいた。
「……祥吾お~~!!」
「よーっす!琥太郎久々~」
「久々~…じゃねぇよ。一昨日も会っただろが。」
「会ったっつってもよー。そんときは琥太郎が松本に呼び出されてすぐ帰っちゃっただろ?」
「……わり」
「で、あれなんだったん?やっぱデートのお誘い?」
ニヤニヤしながら覗き込んでくる。こういうときの祥吾は本当にめんどくさい。
両こぶしを顎の近くに持ってきて、裏声で話し始める祥吾。
「あたし、実はコタのこと気になっててぇ…今までのこと振り返ってみると、コタはいつも優しくしてくれてあたしのこと誠実に想ってくれてて、あたしにとって大事な人ってコタだったんじゃないかって思ってきてぇ。それで今先輩とは距離置いてるのー。」
「おい」
「あたし、……コタが好き、です……!」
「おい!やめろよ気色悪いな!っつーか場所考えろ。ここ住宅街。もっと言うと俺んちの近くなんだけど?」
“瀬川さんちの息子さんが男の子に告白されてたのよ~”
“えぇ!?最近の子はすごいわねぇ…”
“ホモっていうのかしら”
“琥太郎くん、ホモだったのねぇ。あたしこれから今までと同じ目で琥太郎くんを見れないわ…”
などと明日には、いや今日中には噂になっていそうで怖い。怖すぎる。
なんせ主婦のネットワークは半端じゃあない。

