「あれ、もう行くの?随分早いね。」
「うん。今日は祥吾と一緒に行くから。」
「祥吾君って中学二年生のときに九州に行ったんじゃなかった?戻ってきたの?」
「中学卒業してから戻ってきたんだってさ。言ってなかったっけ?」
そういえば父さんは仕事に行かないのだろうか。
いつもだったら家を出てる時間のはずなのに。
ちらりと父さんを見るとカメラの準備をしていた。
なんだ、やっぱり仕事行くんじゃないか。時間は大丈夫なのか?
「父さん、仕事は?時間大丈夫?」
「ああ、今日は休みだよ。息子の入学式だから有休使っちゃったよ。」
さぁ、琥太郎の写真をたくさん撮るぞ、カメラマンの腕の見せ所だなー、はっはっはなんて笑ってる親父を見て力が抜けた。
肩にかけているカバンがずるっと下がった。
……何してんだよ父さん。
「あのなぁ、俺もう高校生なの!どこにわざわざ有休とって本格的なカメラで息子を撮影するカメラマンがいるんだよ!恥ずかしいわ!」
「「ここにいる」」
綺麗にハモッた二人に盛大にツッコミを入れる。
「ユニゾンするな!仲良しか!」
「琥太郎、ユニゾンじゃない。二部合唱だ」
「仲良しか、じゃなくて仲良しなんだよ」
「どっちでもいい!あー、もう俺行くかんな!!」
本当に恥ずかしい両親だ…。
高校生にもなって親が盛大に入学を祝うことへの息子の羞恥に関して全く配慮していない。
思わず俺は家を飛び出した後、頭を抱えため息をついた。
入学式変に悪目立ちしないかな。もしそれで俺が苛められたらどうしてくれよう…なんて。
「琥太郎!!」
「ぅうわ!!?」

