まだ新しくてパリパリの制服を身に着けて、どきどきしながら迎えた中学の入学式の日。

春の日差しが暖かく、空は青く澄んでいて優しいピンク色の桜がひらひらと舞っていた。


小学生とは違い、中学生という響きはなんだか少し大人の仲間入りをしたような気分になる。



校門で写真を撮っている人たちが下がってきた際、私はそれに気付かずぶつかってしまった。

よろめく体。倒れる、と思った瞬間なんだかふわっと優しい香りに包まれた。




「っと……。危ないな。気をつけろよー?」




抱き留められたんだ、と気づいてあわてて距離をとってから深く頭を下げた。



「あの、ありがとうございます…!すいませんでした…!」

「いいっていいって。じゃな。」



ひらひらと手を振ってその人は足早に行ってしまった。



「琥太郎(こたろう)ーっ。なに入学式早々ナンパしてんだよーっ」

「うっせ!ちっげぇーよ!」



駆け寄ってきた友達らしい人とじゃれ合っているのを見ていたら、目が合った。

そらすわけにもいかずへらっと笑ったら笑い返してくれた。

その笑顔にどきんと胸が跳ねる。





琥太郎、くん。





さっき彼の友人が口にしていた名前を心の中でそっと唱えてみた。







琥太郎くん。

私あなたのことが好きになってしまったみたい。







桜舞う入学式の日。


私は彼に恋をした。