すると突然部屋の出入り口の扉がゆっくりと開いた。
全員が一斉にそっちを見た。




湊は机の上に乗せていた足を下におろした。




扉が開いてそこから現れたのは九条院家当主、九条院 重文(くじょういん しげふみ)。




重文の背後には護衛人の柊 凱斗(ひいらぎ がいと)と、柊 紗七(ひいらぎ さな)がいた。




紗七は涼音の母親である。




扉が開くと重文はゆっくりと歩き出した。
兄弟達と護衛人は皆黙って重文を目で追っている。




重文は凱斗が引いた上座の椅子に座った。
表情一つ変えずに辺りを見回す。




「…文人は相変わらず来てないか。まぁ、いい。今日は美桜について言う」




やっぱりと言うように結子や湊はニヤリと笑い、絵里香は苦しそうに下を向き、昴と龍之介は無表情で重文を見ている。




護衛人達はそれぞれ手を前で握り、重文を見つめている。




重文はしばらく周りの様子を見てから口を開いた。